思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『大東亜解放戦争(上)』岩間弘
☆☆☆☆☆
創栄出版

全日本人必読の書。高校の歴史は、古代史〜江戸時代までをすべて捨てて、これのみを三年かけて教えても良いくらいである。
ただし、中村粲大東亜戦争への道』と勝岡寛次『抹殺された大東亜戦争』の引用がやたら多いので、その両者を読めば事足りるかも……。
世界史的にはコロンブスアメリカ発見、モンゴルの元寇あたりから、日本史的には種子島ポルトガル人来日あたりから描いているという、気が長いもの。結局、それくらいのスパンで見ないと、白人の世界拡張(侵略)の流れは理解できない、ということなのだ。

「スペイン人入植者たちは(略)中南米一帯の諸民族で一千万人を超える大規模な虐殺が実際に行われ、諸民族を根こそぎ絶滅に至らしめた」

ポルトガル商人による日本人の奴隷売買は公然たる事実で会った。(略)秀吉は断じてこれを許さなかった。」

「日本人をキリスト教に改宗させた上で支那制服に根こそぎ動員しようということであった。
 これは秀吉にとって由々しき事態であった。キリスト教カトリック)布教とは、スペイン国家戦略そのものであり、侵略政策と密接に関係していたのである。若し万一支那の明がスペインに征服される様な事態になればそれは、元寇の危機の再来を意味した。(略)西欧の明制服の機先を制し、その野望を挫かんとして、逆に日本から撃って出た」
これは重要で、今までどの歴史書を読んでも、武士の雇用対策だとか、いまいちな説明しかされていなかったことが、日本のみでは飽き足らず支那まで手中に収めようとしたとか、秀吉が晩年には錯乱したという強引な解釈をとることなく、初めて腑に落ちるのだ。

アメリカがメキシコ領内にアラモの砦を囮として築き、メキシコを挑発し、わざとメキシコ軍に先制攻撃をさせ戦わせ、(略)砦に立てこもった百八十七人が玉砕した。(略)この戦争は明らかにメキシコ領内に砦を築いたアメリカ側の不正な戦いであるのに、「アラモを忘れるな」の合言葉で自らの不正を隠し、戦争を正当化し、敵愾心を煽り、国民を鼓舞し、反撃に移るという戦法は、「真珠湾を忘れるな」と正に同じ手法であった」

アメリカは(略)ハバナ港を訪問していた米軍戦艦メイン号を自ら爆沈させ、(略)しかしアメリカはスペインが爆沈させたと言って「メイン号を忘れるな」を合言葉にして宣伝した」

この2つは、のちに支那事変の項とつながるのだが、要するに、自分たちがやったことを相手がやったことにするのは世界史上では当たり前のことなのだ。

李朝は清国軍の首都中流という、これまでになかった新たな事態を受け入れなくてはならなかった。駐留清軍は各所で略奪、暴行を働き、多くの漢城市民がその被害に会うことになってしまった。清国の軍兵は集団で富豪の家を襲い、女性を凌辱し、酒肴の相手をさせ、あげくの果てには、金銭財貨を奪うなどの乱暴狼藉が日常のごとく行われた。」
朝鮮の独立から、日清戦争そして日露戦争に至る流れとして、こうした朝鮮の支那の隷属化にある数百年の体質と、そこから脱却したい一派との戦いがあることを絶対に抜きにして語れない問題だ。

「(屯は村の意)(略)「江東六十四屯虐殺事件」(略)義和団事件が起こるや、露軍は満州侵入に先立って江東六十四屯万余の住民を銃剣を以って駆逐し、その約、五、六千の罪なき清国民間人を虐殺、その死体を黒龍江の濁流に流し去ったのである。(略)この大虐殺こそ、ロシアの満鮮侵略から日露戦争へと続く東亜血戦史の序曲となったのである。」
なぜ、ロシアの南下、なかんずく朝鮮半島がロシアの手に落ちることを、日本がそこまで恐れたのか。その理由の大きなピースである。

「若し日本が日清、日露戦争を行わず、韓国併合も行わなかったならば(略)100パーセントロシアの侵略を受け、植民地或いは衛星国となって朝鮮半島全部が今の北朝鮮の様な国になっていたであろう。」
考えたら、それでも問題なかったのかもなあ……。

孫文提案は、我が国の要求と希望が図らずも孫文のそれと一致していたことを立証するものであり、あれほど支那その他の批判を浴びた「二十一ヶ条要求」が実は支那側の希望に他ならなかったという事実」

「だが、多少なりとも圧力をかけたことを口実として条約を無効にし得るものなら、世界に現存する条約の大部分は即刻無効になるだろう。
 例えば、日清戦争後の遼東還付条約は正しく三国干渉によるものである。中国の論理を用いれば「強迫」された遼東還付条約は無効であり、我が国は下関条約通り遼東半島を「永遠に」領有する権利があるのである。(略)原爆投下を背景に我が国に強要されたポツダム宣言も無効になる筈だ。中国の論理の独善性は明白である。」

ロシア革命が起きた時、共産主義コミンテルンが出来た時、共産主義ソ連の実態をもっと深くアメリカが知っていたならば、第二次世界大戦は、大東亜戦争は起こらなかったのではないかと思われる。」

ニコライエフスク(尼港)の惨劇事件」
引用が長く、煩瑣になるので一部省略・現代文に書き換えて要約する。
「尼港(ニコライエフスク)は、樺太の対岸、オホーツク海に注ぐ河口に位置する市村。1920年初頭、ここに日本人居留民、陸軍守備隊、海軍通信隊計700数十名が存在していた。シベリア出兵の連合軍が撤兵するやいなや、ロシア人、朝鮮人、中国人からなる共産パルチザンが同市を包囲襲撃、守備隊との間に偽装講話を結んで同市を支配した。彼等は仮借ない革命裁判と処刑を開始したが、遂に我が軍と交戦状態に入り、我が守備隊は大半が戦死、居留民ら140余名が投獄された。我が軍は救援隊を派遣したが、共産パルチザンは日本軍到着に先立って収監中の日本人を悉く惨殺、更に市民一万二千人中、共産主義に同調せぬ者約6千人の老若男女を虐殺。市街に火を放ってこれを焼き払ったのち遁走した。かくして居留民384名、軍人351名、計七百数十名の日本人同胞が共産パルチザンによって凌辱暴行された上、虐殺されたのであった。」
ソ連のみならず、中共など、共産主義者たちが、その美しく見えるビジョンとは裏腹に、いかに悪逆非道に振る舞いをやっているか、「歴史を直視」しなければならない。

「「マオ」の資料には「実際にはスターリンの命令にもとづいてナウム・エイティゴン(のちにトロツキー暗殺に関与して人物)が計画し、日本軍の仕業に見せかけたものだという」と書いてあり、この不思議な事件の謎が一遍に解消し、疑心暗鬼も見事に氷解する。また、河本大作大佐が計画したという風評もスターリンの命令による謀略であったという事であろう。」
これは張作霖爆殺事件の真相についてのもの。内容自体は、他の本で読んだ事があるのだが。



大東亜解放戦争〈上巻〉靖国の英霊に捧ぐ大東亜解放戦争〈上巻〉靖国の英霊に捧ぐ
岩間 弘

創栄出版 2010-09