思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟

なんかテレビシリーズの1本で番外編的にやるようなエピソードだなあ…。典型的な夢オチ系だし。SFっぽいというか、『エヴァ』っぽいというか…。
キャラの顔がなんか縦長になってる??
メカアクション描写は及第点。特に序盤に過剰にカメラを対象中心に回転させるような動きが気になるが、後半では慣れたのか、演出が変わったのか、文句のあるようなところはない。
ラストのアンカーを使う展開は最初こそ『バトルシップ』の構造そのものだったが、それからは別の方向に行ったので問題なしか。

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バンダイビジュアル 2015


スターウォーズ エピソード4』

LDボックスなどで何回も見ているので、15年ぶりくらいだが、ほとんど覚えていた。
総評としては、エイリアンなど、どのシーンを見ても面白いSF・ファンタジー的なオリジナリティを出そうという心意気に溢れた設定・造形が素晴らしい。
ただし、演出はかなりひどい。小学生で初めてテレビで見た時にあまりの繰り返し、冗長さに眠くなったデス・スターの攻略戦などを始め、編集を別の人がやれば3割はよくなるであろう。失敗、敵機来襲、撃墜など、それぞれのパターンをやりたいのは分かるが、パターンごとに突入、敵機接近、ロックオン、撃墜を繰り返すのはくどい。
宇多丸師匠とかが指摘していたライトセーバー戦は、それほどヨボヨボには見えないけどなあ…。(エディワン版がよりすぐれているのは認める)
ブルーレイで見ると、さすがに3DCGの部分ははっきり分かるのだが、そのへんは仕方ないか。特別編じたいを認めない人もいることだし。
現在見ても遜色ないのがミニチュアの素晴らしさ。さすがにブルーレイだとデス・スターの鉛筆によるパネルラインとかは多少間延びしているのが分かるが、ミレニアム・ファルコンなんかはその精細さは現在の目で見てもその凄さは全く古びていない。

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20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2011-09-16


『ミスト』
※ネタバレ全開なのでお気をつけ下さい。


低予算映画なのかな…?スティーブン・キング原作だから、もっと金をかけてるのかと思いきや、基本的には田舎町の庭先とスーパー内で完結する。
突然、街を包んだ霧の中から現れた怪物からどうやって身を守るか、籠城の中から脱出する、という話だ。
中盤までは、キリスト教原理主義者みたいな中年女が狂言回しとなる。われわれ日本人、とりわけ合理主義者からすると、文字どおり狂信者以外の何物でもないし、彼女の主張にはキリスト教自身に内包するものも含めて矛盾や不合理さがてんこ盛りなのだが、果たしてキリスト教徒の欧米人は彼女たちをどう見るのだろうか…?
おまけに彼女が副店長に銃殺されるところでは、腹に一発だけでなく、額にとどめまでさされる、という視聴者の鬱憤を晴らす演出までなされている(^_^;)
襲ってくる怪物が、子猫サイズから群体メガギラス(ゴジラネタだが)、そして『スターシップトルーパーズ』のバグサイズなど、次第に大型化していくところは巧い。そして最後には超巨大な怪獣サイズが横切る(だけ!?)となるのだが、このへんは『クローバーフィールド』というより、日本の特撮ドラマ『MM9』のほうがはるかに巧い見せ方だった。
基本は怪獣映画というよりホラー映画のスタイルなので、人はどんどん死ぬ。中盤に意味もなくキスシーンを演じるカップルが相次いで殺されるのはお約束。男のほうは軍人のくせにまったくへなちょこな最期なのはどうなのかなあ…。これまた狂信女と同じく、視聴者のストレス解消のため?
最大の謎ともいえる、霧と怪物の正体が、軍による異次元世界への通路を開く実験の産物、と明かされるのだが、そんなC級SF映画みたいなオチなら、訳がわからないままのほうがよっぽどましだった。
ラストは、逃亡に使った車のガソリンがなくなったので、絶望してピストルによる無理心中という形で、愛息まで非情にも撃ち殺す。逃亡中には怪獣に遭遇しただけで、一度も中・小型虫には襲われていないので、そこまで追い詰められる必要性が弱い。どうせなら通り道ごとに虫がうじゃうじゃいて、最後も車の周囲は虫・怪物だらけ、という状況ならわかるのだが…。
主人公の妻は、それほど視聴者に反感を持たれることはやっていないので、繭に包まれただけで、主人公が近づいたら腹から虫が飛び出たり、というショッカー演出は免れた(^_^;)
ただ、そこまでして、ピストルの弾丸がなかったから自殺できなかった主人公がやけになって車から出て怪物に殺されようとしたところで、軍が掃討作戦を実施しているので出くわして命拾いする、という皮肉この上ないラストは意外。でも、意外だからって面白いかというそうでもないよなあ…。『世にも君ような物語』とか、原作通り短編または中編のボリュームならいいけど、長編でこれをされるとなあ…。よく言えばヨーロッパ映画的なブラックなオチと言えなくもないが。

以下、宇多丸師匠のネタバレポッドキャストを見て気づいたこと。

このラストは因果律(悪いことをしたやつは酷い目にあう)を壊している、というのだが、果たしてそうなのか?
途中、狂女が子供をいけにえに捧げろ、というのだが、結果的には主人公の視点(実存主義的)から見れば、子供を殺したことで自分の命(世界)は助かった、と言えはしないか?
預言者然として振舞っていた狂女が人間に殺されたことも、イエスと重ならなくもない。
主人公が神の怒りを鎮めるために息子をいけにえに捧げたことも、旧約聖書でイサクが息子をいけにえにしたことと重なる。
モロに聖書だの神だのを語る狂女を直接的に置いたことでキリスト教徒ならピンとくるであろう(暗示)ではなく明示で、世界が世紀末的に崩壊したことなど、実は本作は聖書のモチーフを置き換えた映画である、ともいえるのではないか。
因果律が成立しているのはあくまでも倫理的、イスラム教や仏教的な論理でしかない。キリスト教では因果律は成立していないのだから(予定説)。
まあ、息子を殺したことで世界が救われた、という因果律より、息子を殺した後で自分が助かった、という(因果関係ではない前後)関係だが。

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フランク・ダラボン

ポニーキャニオン 2009-09-02