思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ガイア(上)』
☆☆☆★

90年に書かれた作品だが、2038年の地球社会を描くのが半分(というか、文量的には七割くらいある)、もう半分というか、SFとしてのメインは、人工的に作られたマイクブラックホールが事故で地球内部に落ち込んだことで引き起こる事態の収集を描く。
このメインプロットの扱いがメインじゃないのが曲者で、先に挙げた文量的に飛び飛びなのはもちろん、冒頭、工学的な説明や装置の建造プロセスをすっ飛ばして、いきなり事故の後から始まるのだ。それでいて、具体的な対策が実行されるのは、550ページあるこの上巻の残り一割くらいからなのだ。
ホーガン的な科学者の日常もあるにはあるが、それよりは、多種多様な未来社会の予測がメイン。
ちなみに原題は『EARTH』未来の地球の姿を描いた、という意味では正にピッタリなのに…。いちおう作中で登場するものの、別にガイア理論がメインではない。

マイクロブラックホールについて「特異点が巨大化するにつれて、成長率は指数関数的に加速する。最後の一時間になっても、地球の95パーセントはまだ呑みこまれずにいる。90パーセントが一気に呑みこまれるのは、最後の一分かそこらだ」
というからブラックホール恐るべし。