思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

カジノ


☆☆☆★

スコセッシ監督で、デニーロ主演とくれば、観といたほうがいいでしょ? おまけに実話を元にした話となれば、なおさら。
冒頭、店から出たデニーロが、駐車場の車に乗り込んでキーを回したとたん、爆発してデニーロが吹っ飛ぶのをコラージュしたオープニングという、強烈すぎる始まり。いや、映画史上でも、これ以上のツカミはないでしょ!
そこからはラスベガスの、五十年代のカジノの裏側が、モノローグを多用して描かれる。ほとんど、テレビドキュメンタリーかと思う量のナレーションだ。
面白くはあったが、シャロン・ストーンが、峰不二子みたいなキャラで、デニーロを引っ掻き回すようになってからは、さすがに地味すきて、「副音声でムービー・トーク」を発動。
そのトークを聞きながら改めて、本作はシュールなブラック・コメディであると再確認した。そういえは、オープニングも、デニーロがマンガみたいなポーズで、爆発映像の手前をスライド的に横切ってたし(^^;)
登場人物たちも、マフィアかヤクザ映画の、シノギのあがりの分捕り合戦だと思えばすんなり理解できる。シャロン・ストーンも、細木数子的な悪女だと思えば、その二枚舌三昧舌にも合点がゆく。ギャグに、副音声でのツッコミがなく、真面目にデニーロに感情移入していたら、彼女の自己中&金目の物に目がないのには終始ムカついて、心穏やかに観られなかったかもしれない。
ただ、『孤狼の血』の鈴木亮平的な凶暴なキャラのはずのジョー・ペッシが、あまり怖そうに見えなかったのは個人的にはちと問題かだったかなぁ。
面白かったのが照明で、まんまスポットライトが登場人物の上に置かれているような場面が、室内外を問わず散見されるのだ。

以下ネタバレ

いちばんの驚きは、冒頭に吹っ飛んでいたデニーロが、生きていたこと(^^;) アニメのような、デニーロの写真をスライドさせただけのオープニングは、映像的なコラージュに過ぎなかったのだった。
クライマックスには、カジノの関係者が次々と、過剰に弾丸を撃ち込まれて殺されていくハイテンポにも呆気に取られた。

ハンニバル(上)


トマス・ハリス著/高見浩訳
☆☆☆
新潮文庫

映画『羊たちの沈黙』は観たが、原作は未読。その続編である本作(が先なのか、映画になった後のノベライズが本作なのかは知らんけど)を読んだ主人公クラリス役のジョディ・フォスターが出演を拒否したと聞いて、いったいどんなエグい内容なのか気になった。
少なくとも、この上巻を読んだ限りでは、少なくともクラリスだけにえげつない仕打ちがあるわけではなかったけどなぁ。
レクター博士は、知性と教養のあるサイコパスという設定だから、言動に衒学趣味かあるのはいいとしても、それ以外の小説全般に、やたら細部まで書き込んでいるので、なかなか読み進まなかった。この下巻になる前に死ぬ人物に対しても、過去のエピソードが主役級に描き込まれてるんだもん、長くなるわな。
なので、3割くらい読んだら、あとは読み込まないモードで読むことに。とは言え、改行もすくなく、みっちり書かれているので、なかなか大変だった。

以下ネタバレ

この巻中で死ぬ人物というのが、レクター博士の潜伏先で、彼を発見するイタリアの警官。映画なら、レクターを見つけた連絡をしたら、次のシーンでは惨殺シーンになっていてもおかしくないモブキャラなのに(´Д`)
ジョディ・フォスターが嫌がったと推察されるのは、この巻では、留置場の中を歩いている時に精液をかけられた、ということくらいだったが、それとて過去のエピソード。前作(小説版だけ?)で描かれていた内容を再掲しただけのように思えたし。

ゴーストバスターズ アフターライフ


☆☆☆★

割と絶賛ムードだったので期待したのだが、モヤモヤする作品だった。これなら、むしろ女性版のほうが潔くて好きなくらい。
本作は一言で言えば、一作目『ゴーストバスターズ』をスピルバーグがリメイクしたらこうなる、みたいな感じ。
あと、『スターウォーズ フォースの覚醒』との類似を挙げる人が多かったが、私は、特にラストとか、『スカイウォーカーの夜明け』まで含めて、大差ないような空気を感じた。
新キャラの魅力については、『フォースの覚醒』と同じく、誰しもが認める点。特に、主人公は、最初は男かと思ったが、その後は実に可愛いのと理知的の中間の魅力に溢れている。金曜ロードショー版は、声優はまさかの斉藤由貴?? にしか聞こえなかったけど、調べたら上白石萌歌だった。二人の声は似てるよねぇ(^^;)
本作がモヤモヤする最大の理由は、ジュブナイルとしてのお約束を守りすぎていること。ジュブナイルでは、主人公の子供は、不思議な出来事に遭遇するが、大人に信じてもらえない。本作でも、主人公は、おじいちゃんの幽霊も、街中で暴れる幽霊も、一般人たる警官はもちろん、母親にも信じてもらえず、精神的にはどん底まで追い詰められる。これが結構体感的に長い。私らからすれば、『ゴーストバスターズ』を見に来てるんだから、そういえ重い気持ちになるのはちょっとでいいから、スカッとさせてくれよ! とい言いたい。リセットされて、幽霊の存在を誰も知らない世界線ならこの展開も分かるが、40年前とはいえ、ニューヨークのど真ん中でマシュマロマンが暴れたことのある世界やで!? 911並みに語りつがれていてしかるべイベントでしょうよ(´Д`)
母親が魔王に憑依されて、世界を救うために出動するときにも、あのゴーストバスターズのテーマは流れない。本作は、終始地味というか、まじめなドラマを作りすぎなのだ。そのくせ、第1作へのオマージュは随所に出てくるし。ただし、いちおう見た事がある私の琴線には全く触れなかった。これまた、まだ女性版のほうがまだエモかった。たぶん、作品全体の雰囲気が陽性か陰性か、の違いだと思う。

以下ネタバレ

『スカイウォーカーの夜明け』っぽさを感じたのは、クライマックスの大ピンチに、オリジナルメンバーが駆けつけ、その内の一人は映画冒頭で亡くなっているので、幽霊として出てくること。なんでこっちは良くて、あっちはダメなのか、よく分からんなぁ……。
そもそも、このおじいちゃん、一言も喋らないのは幽霊だからなのかと思っていたのだが、制作の数年前に亡くなっていたのだと、後で知った。

神の一手

☆☆☆★

韓国のマンガが原作なのかな?
デスノート』と『ヒカルの碁』を合わせてノワール仕立てにしたような、というと乱暴すぎるか。
なんと言っても、韓国人キャストを、そっくりの日本人に置き換えて観るのが楽しい。主人公は西島秀俊、昔で言えば山城新伍的なコメディ・リリーフは宮川大輔(大輔花子じゃないほうね)、ラスボスたるヤクザは山本(『シン・ウルトラマン』のメフィラス)とか。
兄の命令でイカサマ碁もやっていたプロ棋士囲碁)の西島秀俊は、イカサマがバレて兄を殺され、自分も刑務所に入るが、そこでケンカの仕方と、独房の隣にいる男から囲碁を学ぶ。
出所した西島は、宮川大輔を始め、最強メンバーを集めて、ヤクザへの復讐を始める。
囲碁映画(マンガ?)ということで、誰も彼もが、特にヤクザが囲碁で白黒つけようとするのはおかしい。
基本はノワールなので、ヤクザのやり口は韓国映画らしいリアルな血のりや特殊メイクで、生々しい。
特に、チームの一人を盲目に設定していることで、石を置く位置をセリフにしやすくしているものの、「ケイマ」とか「コスミ」とかの説明が全くないのは、不親切か。囲碁がうまいわけでもなく、調子の良さと演技力(ハッタリ)を買われてスカウトした宮川大輔囲碁を教えるシーンでも入れて、そこでルールや用語の説明をさらっと入れておいたら良かったのに。

以下ネタバレ

なんとなくだが、全20巻くらいのマンガの、しかも10巻くらいの段階で映画にしたような仕上がり。特に、冒頭に出てきた浮浪児が、ラストまで出てこないとか、ヒロインの立場も、大して活躍せずに終わっている。
純粋に映画としても、ラスボスとのバトルで、彼自身が打つわけではない、というのはまったく盛り上がらない。そもそも、どこにカメラを仕込んで、どこから指示を聞いてるのか、全く分からんし。
盛り上がらないから、最後は格闘でお茶を濁しているし。
格闘といえば、掛けた罰のデコピンで目をつぶしたりするのは、『刃牙』を思わせるバカっぷり(´Д`) あるしゅのヤクザ映画なのに、誰も銃を使わない、というのも奇妙だ。こと我々日本人なら、誰もが囲碁をたしなみ、日本みたいにヤクザでも簡単に銃器をぶっ放せないパラレルワールドのお話、と割り切って見るのが良いかも。
ちなみに、観ているうちに、誰もが気にする人はいなくなるだろうが、「神の一手」は出てきません(^^;)

ヤンキー弁護士 キャバクラ嬢 優奈



☆★

一種、まじめな映画かと思ったんだけど、サブタイトルを見たらそれも間違いだと分かるよね(^^;)
とは言え、物語の骨格そのものは、真面目な映画になってもおかしくない。主人公はキャバクラ嬢で、ある日に職場以外のバーで睡眠薬を入れられてレイプされた。そこで頼ったの弁護士が、たまたま知り合いだった元ヤン。
犯人に迫る主人公たちだが、相手もワルなので、さらに危機が。元ヤン弁護士は、昔の特攻服もデコバイクで、成敗に向かう、という話だ。
ピンク映画なので、レイプシーンだけでなく、随所に妄想映像など、お色気シーンが入る。
主人公は聞いたことある(マックスファクトリーでフィギュアになってるからね)希崎ジェシカで、演技はまあまあ悪くなかった。あとは、こういう映画ではお馴染みの蛍雪次郎さんも。
冒頭に、弁護士の事務所にあるあるの、正義の女神像が映って、大仰にその意義がテロップで出るのが(色んな意味で)面白かった。
とは言え、別に見る必要はない映画。
主役の2人は、大丈夫か、というくらいスレンダーだったなぁ。好みの体型ではあるけど。

ロスト・イン・ザ・サン 偽りの絆


☆☆★

主人公のおじさんは、少年を車に乗せて、叔母の家まで送り届ける、ロードムービー。スタローンの『オーバー・ザ・トップ』みたいな話だ。
主人公が意外と悪い男で、強盗とかを躊躇なくやらかす。このへんは『テルマ&ルイーズ』みたいでもある。
地味な話で、ジャンル映画好きには、これと言って刺さる部分はなかったが、感動系が好きな人なら、それなりに良しとするかな。
少年のほうは、割と誰もが感情移入できそうな、良い子だし。
劇伴もよくできていて、何回か出てくる拍手を使った曲には疑問を持ったものの、クライマックスにはバイオリンを変わった奏法で鳴らしたりと、良くも悪くも印象に残った。

サバイバル・ナイト


☆☆★

たぶん草の根劇団による自主制作映画(公式YouTubeでの公開)。
裏山でのロケと、ペンションを一晩借りれば撮影できる内容だ。
30前くらいの面々が、小さい時に埋めたタイムカプセルを取りに山に登ったら、山を降りる途中で迷ってしまい、謎の家に辿り着く。そこで目にする過去の部屋の幻とは?
まあ、どうってことない内容で、容姿も縁起も、素人劇団としては中の下という感じ。

以下ネタバレ

迷い込んだのは、メンバーの中の一人の、タイムカプセルに入っていた人形をきっかけに、かこのトラウマが産んだという、まあ、『ジョジョ』の暴走型スタンドみたいな話だ。
子供向けアニメみたいに単に説得するだけではなく、『10分間2018』みたいに、トラウマを解消する解決法にしてほしかったなぁ。