思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ラスト・ウィッチハンター


☆☆☆☆

ヴィン・ディーゼル主演のアクション・ファンタジー。800年前に、魔女の呪いで不死になったディーゼルは、魔女ハンターとして、評議会の指示を受けながら生きてきた。
現代で、人間としての相棒だったマイケル・ケインが狙われ、ある魔女のバーが火事になったことかは、魔女との宿命の決着をつけることになる。
書いて/読んでいて分かる通り、『ハイランダー』やジョボビッチ版『ヘルボーイ』はたまた『シャドウハンター』など、現代を舞台にしたファンタジーもののテンプレから一歩も出ていないプロットである。
プロデュースもやってるヴィン・ディーゼルが主役を張ることが全ての映画だから、ある意味、内容は何でもいいのだ(^^;)
とは言え、金や結構はしっかりできていて、超大作とまではいかないものの、普通にA級映画の完成度である。CGや、モンスターなどの美術造形も、『ロード・オブ・ザ・リング』と『ハリー・ポッター』以降のファンタジー映画として申し分ない(もちろん、超えるとは全く言わないが)。
ロード・オブ・ザ・リング』繋がりで言えば、ぴっちり横分けのイライジャ・ウッドも出ているし、キャスティング費用もけっこう金をかけていることが分かる。
特筆すべき独自性は何もないが、ファンタジー映画好きなら、観ても損をすることがない(ただし、得もしないというのは、問題と言えば問題かも)作品に仕上がっている。

カオス


☆☆☆☆

2005年版。ステイサム主演。
「二大スターの共演」という惹句に惹かれて観たのだが、二大スターが誰なのかも知らずに観た。番組名に年号が入っているので、リメイクされるほど優れた元ネタがあるのかと思ったからだ。でも考えたら、同名の日本映画(中田秀夫のホラー映画)があるから、というだけなのかもしれない。ちなみに、邦題も原題と同じだ。
冒頭は銀行強盗のシーンから始まり、犯人ウェズリー・スナイプス(こちらが二人目のスター)は交渉役に、先日、人質を死なせて謹慎中のステイサムを指名してきた。
女刑事役のジャスティン・ワデルは、日本の女子アナに、そっくりか人がいるんだけど、名前を思い出せない(@_@) 私的には、彼女目当てだけでと、充分、観る動機にはなった。キスシーンがあったのはショックだったけど(^^;)(追記:丸岡いずみをちょっと細身にした感じ! だいぶ検索してようやく探し当てた(^_^;))
本作は、結果的に予備知識ほぼゼロで観たのが良かった。
ちなみに、タイトルは、作中で、頭良さげに見せるために出してくるカオス理論からとっている。

以下ネタバレ

銀行強盗の手口も、クライム・サスペンス的には、斬新な手口なのだが、それ以降のツイストが衝撃過ぎて、せっかくのアイデアが全然効果を上げていない。もったいない(^^;)
容疑者が次々に殺される展開とか、なんか香港映画みたいだなあと思ったら、終盤は『レイジング・ファイア』みたいな、スナイプスが実は人質を撃った、元刑事でステイサムの相棒だった、という展開に。
さらには、衝撃のオチが待っている。

以下さらにネタバレ(某有名サスペンスのオチにも触れます)

ラストは、『羊たちの沈黙』よろしく、真犯人が逃げおおせるという、ある意味では胸糞的な幕切れ。
さらにその真犯人はステイサムだった、つまりは強盗とグルだったのだ。このへんは、『12モンキーズ』とか『ユージュアル・サスペクツ』的な路線を狙ったと思われる。ラストを観ると、ブルース・ウィイス主演でも良かったんじゃないかと思う(^^;) でも、ステイサムも、『ローグ・アサシン』でどんでん返し系映画の主演を努めているけど。
ちゃんと、伏線も画面で見せてくれて、最初から見直す必要を省いてくれてもいる、親切設計だ。

ザ・バットマン



☆☆☆☆

画面も話も暗いと聞いていたが、そこまででもなかったかな(DVDで観た『グリーン・ディスティニー』のほうが夜が暗くて見えなかった(^^;))。
忙しかったので、録画を何日かに分けて観たのだが、一気に観られるくらいは面白かった。画面がハードだから、見た目重視派の私としては、好みのタイプ。
基本としては、『ジョーカー』の対となる作りだな、という感じ。物語とかテーマではなく、映画の結構として。
ミステリーとしても、ヒーローものとしても、中途半端ではあるが、全方位的にカバーしている、とも言える。
冒頭の、日本人襲撃シーンで、みんなピエロのメイクをしているのは『ジョーカー』のクライマックスで、ひとりだけ顔半分だけメイクしているのは『ダークナイト』とかのトゥーフェイスのオマージュと、半分良心が残っていることの(分かりやすすぎる)表現か。
個人的にダメだったのが、アンディ・サーキス演じる執事と、キャットウーマン。アンディは、顔出しでのシリアスな役は似合わないよ(´Д`)
キャットウーマンは、マスクが、日本の泥棒コントのほっかむりちしか見えないコスチュームがひとつ。ドラマ的には、バットマンにキスするのがダメ。マスクも取らないようなヤツに惚れるか??(´Д`) ウェインになら分かるけど。いや、本作は、ブルース・ウェインではなく、バットマンこそ本性である、という意図なのは分かるけど。ある意味で、色仕掛けで誘惑(自分の復讐のために動かす)している可能性も高いけど。
バットマンスーツは、割と格好良かったかな。胸のエンブレムの直線的なアレンジとか。
時代設定はダメダメ。生活様式はどう見ても80年代なのに、現代的なスマートフォンSNSもでてくるわ、コンタクトレンズ式のカメラ、という超テクノロジーも出てくるという混在っぷり。

以下ネタバレ

悪者が、予告編で主犯のように出されていたリドラーだけでなく、マフィアのボス、その手下的なペンギンと、3人それぞれが組織のメンバーというより、三者三様の立ち位置に配置されている。特にペンギンは、予告編にもあった派手なカーチェイスまでやったのに、ニセ情報でした、とは気が抜ける展開。暗闇に浮かぶバーニッシュ調の爆炎は美しかったが。
ブルースの父が、悪どいことをやっていたとショックを受けさせて、後でアンディにセリフでだけ否定させるのも、なんかおざなりというか、説得力に欠ける。これをもって「真相は藪の中」と解説する人が多いが、作劇的に説得力がないだけなんじゃないだろうか。
残り30分くらいあるのに(それが分かるのが、家で観る強みまたはデメリット)リドラーが逮捕されるのには、偽の犯人かと思いきや、本物。そこから、予め仕掛けておいたギミックが発動する。『セブン』とかのスタイルか。さらに、クライマックスに、リドラーのフォロワーというかコスプレ野郎がわんさか出てくるのは『ジョーカー』のオマージュというか、本作がテーマ的に、同作の裏表の関係にあるのことの示唆か。ここをもってサヨク的な人は、トランプ支持者とかQアノンだとか言ってるが、サヨク活動家や、右翼の言論を弾圧したり、広義のデモ参加者と大差ない気がするぞ……。

炎の転校生

☆☆★

オリジナル・レーザーディスク・アニメの一話と二話。
レンタルビデオはないのだが、どっかで観た記憶はあるけど、内容はとんと忘れていた。
そもそも、マンガ『燃えよペン』で描かれていた「鼻血ブー」はなかったやん!(^^;)
作品の中には、時代性というか、タイミングを逃すと、面白さが全く分からないものがあるが、本作はまさにそれ。『ホモホモ7』なんかもそうだったが、パロディマンガというのは、斬新であればあるほど、それがスタンダードとなって、後の世には当たり前になってしまう。
作画は悪くはないが、ギャグが寒く、パロディとして機能しなくなってしまっているのだ。熱血ものとしても、主人公の滝沢が、ボクシングで敵に滅多撃ちにされても倒れない理由に説得力がゼロなのは問題かな。
そういう意味では、間違いなくパロディなのに、数十年経っても面白い『トップをねらえ!』は凄いよなぁ。

ザ・レイク



☆☆☆★

怪獣映画だが、タイとハリウッドの合作というのが珍しく、チェックせずにはおれなかった。
てっきり『ロード・オブ・モンスターズ』みたいなZ級かと思ったのだが。邦題も、英語原題通りだし。
日本以外の開示映画といえば、北朝鮮の『プルガサリ』や、マレーシアだったかの『ガルーダ』、韓国の『グエムル』などが思い浮かぶ。
序盤は足跡から始まるエメリッヒ版『ゴジラ』を強く意識させるハリウッドのスタイルだが、中盤は『グエムル』『エイリアン』『プレデター』そして『ジュラシック・パーク』など、モンスター・パニック。長めのエピローグでは、日本でもハリウッドでもない、タイ映画独自の雰囲気になるのが面白かった。
ルックは、人物描写はハリウッドらしいパキッとした画面だが、遠景は、なんとなくぼんやりしているのは、高温多湿という東南アジアならではの気候によるのだろうか。
演出的には、やたら間が長いのが気になった。サスペンスやスリラーにしても、緊迫感が高まるのではなく、特に変化がないので、だれるのだ。そのへんも含め、約2時間というとは長すぎる。その割に、ネタバレ欄で書くような説明は足りないし。演出のテンポを早めた上で説明を足して、90分くらいにして欲しかったなぁ。
怪獣のレンダリングは予想以上に良くできていて、普通に感心した。怪獣映画ファンなら、珍しいタイ映画という意味でも、観ておいて損はない。

以下ネタバレ

本作で面白いのは、怪獣映画かと思わせて、モンスター・パニックであること。序盤に体高6メートル、全長20メートルくらいの怪獣は出てくるが、その後に住民を次々に襲うのは、人間サイズ。冒頭には『ドラえもん』のピー助の卵と同じくらいの卵も出てくる、三重構成なのだ。
人間ドラマとして、4組くらいの男女(夫婦だったり、親子だったり)が登場するが、いまいち区別もつきにくく、もうちょっと整理してほしかった。特に警察側に父娘の人間ドラマはいらなかったかな。
あと、何故か怪物と感覚を共有ふるおっさんが出てくるが、これももうひとつ意味がわからなかった。捕まえた怪物を殺せ、という群衆との対比で、『デビルマン』をやりたかっただけ? 怪獣との共感、という点では『ガメラ3』を連想するし。
怪獣のデザインは親子ともほぼ同じで、プレデターとエイリアンを合わせて、『ジュラシック・パーク』風にレンダリングして、『グエムル』風に演出した、という感じ。それでも、珍しいタイ映画という応援姿勢もあって、むしろプラス要素に。
子供である怪物は凶暴なのだが、親は実はほとんど人間であっても逮捕されるような暴行は行っていない。車にいる主人公たちを睨んでいるだけで、全然『ジュラシック・パーク』みたいに攻撃してこないし。
ラストまで見ると、実は親のほうは湖に棲む、土地の守り神的な存在なのかと示唆されるので、このへんは日本の怪獣映画にも近い思想。モスラとか、バランとか、『キングコング対ゴジラ』のキングコングとかね。ただし、そのへんがだいぶ説明不足でわかりにくいし。
怪獣と共感覚になった男がどうなったのかも、着ていた服が壁画のある洞窟で見つかるだけで、何の説明も描写もないし。

オールド


☆☆★

シャマラン監督作品。予告編からも非常にわかりやすい設定。バカンスである砂浜に来た観光客が、急速に歳をとる、というスリラー、というか、パニックもの。
結論から言えば、スティーブン・キング的な短編ならいいが、映画としてはダメな作品の典型。科学的以前に、SFとしてもツッコミどころが多すぎる。キャストも、B級だし、舞台となる砂浜も、合成感丸出し。ただし、砂浜の不自然さは、自然ではない怪奇現象が起こるという意味で、敢えてやってるのかもしれないけどね。
死体を敢えて見せないのも、意味分からん。犬の死体があると言ってるのに、画面に一切映らないのは、見落としたのかと思って巻き戻ししたほど(^^;)(吹き替え版をながら観していたので)。それだけなら、動物愛護団体向けの過剰自粛かと思ったのだが、ほかの人間の死体も、超ロングでのヒキのカットばかり。子供向けでも狙ってんの!? というくらいの過敏っぷり。その割に、まったく子供をメインターゲットにしている感はないのに。
砂浜にいるのは、主人公の家族の他に、ラッパーのカップル、3組の男女がいる。その3組のうち、アジア系のほうはキャラ立ちしているが、白人のほうは区別がつきにくく、言動をまとめることで一組減らしたほうが見やすくなったと思う。
シャマランらしい、どんでん返しというか、オチがあるが、完全に蛇足。シャマラン作品は当たり外れが激しいが、本作はハズレかな。
こういうプロットの映画なら、せめて『タワーリング・インフェルノ』みたいなオールスター映画にしないと。ことに、主人公の妻役の女優さんが、男っぽくて、全く好みではなかったのもデカい。

以下ネタバレ

本作の設定のキモというか、悪い意味での独自性は、歳の取り方の法則性がよく分からないこと。登場人物のひとりが、細胞の老化だとか、それらしい仮説を話すが、とうてい受け入れられない。時間の経過が早いわけではない、ということだけは分かるが。特に爪が伸びないのを否定する仮説とかは。
きょうだいで仲がいいのは分かるが、急に身体が大きくなって、第二次性徴を迎えたからって、姉と弟でセックスするかなぁ……。ある意味、本作で一番気持ち悪い展開。普通は戸惑うだけでしよ。身体の成長が早まるだけで、精神面は変わらないんだから。「見た目は大人、頭脳はコドモ」状態。
老化して骨が脆くなり、骨折した側から治るので、腕が木の枝みたいになるのは面白かったが、人体の変形という点で、『ジョジョ』っぽいと思わずにはおれない。老化という点では第5部のスタンド「グレイトフル・デッド」まんまだし。
ラストは、製薬会社が、この場所を使って新薬のテストをしていた、というオチが、長めのエピローグ的に用意されていて、それがシャマラン印になっているのだが、別になくてと良かったんじゃないかなぁ。それよりも、なんとか脱出していた、数百年経っていて、文明が滅亡していた、とかのほうが面白かったのでは?

アルマゲドン2012 マーキュリー・クライシス


☆☆★

最初にちょっとだけドローンのCGがあった『インデペンデンス・デイ2017』原題は『DRONE WAR』より数倍まし。
しかし、何十あるか分からないような、『アルマゲドン20なんとか』や『インディペンデンス・デイ20なんとか』を、内容と原題を全部把握している人っているんだろか……(@_@)
本作は、水星の調査に向かったシャトルが、星系規模の災害に巻き込まれる。当然、地球も大ピンチ、というCからZ級の映画ではお約束の展開につながる。
本作では、当然(?)CGもショボいが、宇宙でのレンダリングは、少なくとも頑張っている日本映画くらいのクオリティはある。
宇宙船は、スペースシャトル、とりわけ『ガンダム・センチネル』のコロンビア級を上下につぶしたような形状。
人工重力発生装置なんてのが気軽に出てくるのは、そのほかに出てくる「プロジェクト7」なる超兵器や、民間人でも作れる小型超通信機などと合わせて、近未来感を出しているともいえるが、物語を簡単に進めるための都合の良い設定だろう。なかでも、無重力の表現として、俳優をワイヤーで吊るのもめんどくさい(金がない)、というのが最大の理由であろうことは、想像に難くない。
太陽黒点が減少して、なんでか知らんけど、水星が地球の衝突軌道にまで曲げられてしまう。磁気以上で、鉄が空中に浮き上がったり、電子機器が故障したりするが、科学的法則性もなく、『宇宙大怪獣ドゴラ』のそれと大差ない。

以下ネタバレ

冒頭に堂々と出てくるプロジェクト7とは、強い磁気発生器を積んで小惑星で、それを接近させて、地球に迫る物体を衝突軌道から逸らそう、というもの。いちおう、核ミサイルで粉々にしても解決しないという、その他のB級(Z級どころか、B級SF映画ですらそうなのだ)よりも一見ましな超兵器となっている。磁力のパワーのモンタと、そもそも質量と速度という運動エネルギーの絶対差は覆らないんだけど(^^;)
磁力が強まった水星の磁力を利用して、マスドライバーみたいに加速する、というのも、まず、シャトルに磁力発生装置がないと無理だとか、そもそもムリだけど、「少年ジャンプ」というか、『アストロ球団』レベルのトンデモ科学。まあ、感想で指摘するだけ野暮か(^^;) 友人と観ながら突っ込むのが一番の楽しみ方かも。