思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

仇討


☆☆☆☆

他の東映作品では、割とチャラい役が多い中村錦之助だが、本作では、苦み走った男。でも、馬廻り役という貧乏侍の次男坊。
負けん気な性格かは、上役に絡まれて、果たし合いをする羽目になった。ところが、先に絡まれたのだが、その兄を河原で殺してしまったため、藩として正式に仇討の場を設けられることとなる。
黒澤明の『七人の侍』では、道端ね敵討ちをやったりしているが、公認の敵討ちって、実は見たことないかも。武士としての正式な仇討の儀式への作法とかは、切腹に比べるとかなりレア。
設定だけ聞くと『最後の決闘裁判』の日本版のようだが、正式な敵討ちの場になる前に闇討ちしようとする上役たちという、謀略ものでもある。町外れの寺に身を寄せる主人公に、丹波哲郎演じる刺客が襲い掛かる。で、また間抜けなやられ方を(^^;)
60年代という黄金期に作られたせいか、『大殺陣』ほどではないが、どのカットも構図がばっちり決まっているのが素晴らしい。

以下ネタバレ

ラストは、上役のほうは、助太刀すると言うシーンを見せているので主人公側が圧倒的に不利になるのは観客は分かっているので、それをどう跳ね返すのか。
実際に仇討が始まると、最初は押しているが、助太刀が来ると、圧倒的に不利になる。そこで主人公が「助太刀無用!」と叫ぶのだが、助太刀しようにも、助けてくれる可能性があるのは、兄くらいしかいない(^^;) このセリフ、相手に言ったようにしか見えないのだが、なんか間違ってる気がする。「助太刀卑怯」とか「卑怯なり!」のほうが適当では?
さらに加えて、後からまるで『水戸黄門』のクライマックスのように、雑兵たちがワラワラと参戦してくる。このへんは、『血槍富士 妖刀百人斬り』みたいな悲壮感である。
本作の場合は、主人公は死んじゃって、片付けが終わってからの、設営係のやけ酒や、そして主人公の兄が切腹しているのを見つけるシーンでラストとなる。現代劇に当てはめるれば、冤罪に問われて、死刑になったような重い話しである。