思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

かくて神風はふく


☆☆☆★

昭和18年あたりの、元寇を描いた邦画。もちろん北条時宗も出てくるが、主役は対馬の忽那氏。ロミオとジュリエット的な要素もありつつ、基本は国を守る武士たちの話。
時節柄、とうぜん国威発揚プロパガンダ映画的な側面は強いのだが、意外と普通に見れた。
まず、プロパガンダ的なところ。暴風雨で元軍船が全滅した後に、武士たちが皇祖皇宗に感謝するシーン。『逆説の日本史』的にいえば、現実主義の武士が、直後に神風とかありがたがるのはおかしいが、まあプロパガンダ映画だから、これが主題だしね。
製作は大映だが、特撮では東宝が協力しているらしい。クライマックスには、暴風雨の海で船が翻弄されるシーンがあるので、それを担当したのか。
邦画では、私が観た中で最古の映画かと思ったのだが、考えたら『西住戦社長伝』のほうが古いかも??
古いと思ったのは、ちょくちょく、フィルムの痛みがけっこう目立つ箇所があったから。
間違った理解が蔓延しているが、戦前のほうが世界史と歴史的知識がまっとうだったことの証左として、元軍(実体はほぼ朝鮮人だが、なにせ当時は「日本」だったので、そこはノータッチ)が対馬で虐殺を行ったことがちゃんと描かれていることは見逃せない。予算の都合上、単に十数人が寝ているだけにしか見えないのが残念だが。
また、元軍襲来に備えて、武士だけでなく、刀鍛冶をひっとうに、5種類以上の職業の人達が働いて準備するシークエンスには、改めて感動した。もちろん、大東亜戦争を戦う日本人に対する、国民総動員を促すものであることは明瞭なのだが、一周回って、現在の侵略SFとかにも活用できる描写ではないだろうか。『妖星ゴラス』みたいな。
当時の大御所たちが出演しているようだが、当然ながら(威張らんでいい(^^;))私にとっては誰も知っている人はいない。ただ、若き日の関西ジャニーズの横山みたいな現代風の優男がいたり、またこれは劇中の設定だが、忽那家の娘の名前が「水緒」なんて、これまた一周回ってモダンなネーミングだったりしたのも面白かった。
元軍船上での戦いは、大将役の人の立ち回りがめちゃくちゃスピーディーで、コマ落としではないとすれば、(変な喩えだが)ジェット・リー並の達人。往年の剣術の達人の片鱗を思い知らされた。