思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ブッシュウィック 武装都市

☆☆☆★

てっきり『ジョン・ウィック』の二匹目のドジョウを狙った勝手な邦題だとばかり思っていたら、原題も同じだった。全然知らなかったけど、アメリカの都市名らしい。
主人公のバディとなる大男も、キアヌ・リーブスが激太りしたらこうなる、という雰囲気がある(^_^;) 出ている俳優も、基本的に華というか魅力がない感じなのだが、映画の雰囲気は悪くない。
婚約者であるカレシを親に紹介するために実家のあるブッシュウィックに地下鉄でやってきた主人公。駅から地上に出ようとすると、突然、炎に包まれた男が地上からの階段から降りてきた。
で、地上に出てみると、そこはまるで戦場のような、武装市民と軍人が銃撃戦を繰り広げていた・・・。
本作は、ほぼ情報ゼロで観たが、映画ファンなら一見の価値あり、という感じ。低予算ながら、1カットで内戦パニック映画を撮ろう、という感じのコンセプトが興味深い作品。感想動画とかもなかったが、映画ファンなら注目されてもいい作品。
厳密にいうと、オープニングのヘリの兵士の目線での空撮の後は、主人公の後を付け回すカメラの手持ち映像。クライマックス前にも同じくヘリからの映像があるが、これは主人公の移動している時間をショートカットした、という意味もある。
主人公を追うカットも、明らかに切り返しカットとなる部分があるので、2カットと言えるが、なぜここmでやっといてここだけ回り込みでなく切り返しにしたのかがよく分からん。また、細かく言うと、真っ暗になったり、逆になぜかあちこちにあるライトでハレーションを起こして画面が真っ白になる一瞬が何回もあり、ここでショットを繋いでるやろ、というのがある程度映像に詳しい人にはバレバレ。でもまあ、リアルタイムで主人公の姿を追っている感覚が得られれば、主旨・目的は達せられたと言えるだろう。観たいけどまだ未見の『1917』に近いと思う。
手持ちカメラ映画の常として、おそらく低予算で、ガンエフェクトとかもほとんどCGで、街に上がる煙も完全にCG。
しっかり主人公サイドも負傷するのが良い。中盤にはバディとなる元海兵隊の衛生兵が、足に刺さったガラスを抜いて、焼いて殺菌し、酒で消毒する、という痛いシーンもある。おまけに、主人公が撃たれて薬指が切れるのを、これまた処置するというトドメまで。

以下ネタバレ

そこまでやっても、海兵隊はクライマックスで死んじゃうし、極め付けは主人公が死んで終わるというトンデモ展開。これで、なんとか生き延びたら凡庸なテレビ映画、という感じになるところを、全く救いがないラストにしたところで、印象に残る佳作になった感じ。
暴動の原因が結局よく分からないのも良い。なんかヨーロッパ映画風、というか。

2017年 アメリ