思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ザ・レイド

☆☆☆☆

以前紹介されていた映像を見た時から、観たいと思っていて、ようやく観れた。(どうも高橋ヨシキ氏の東京MXの番組らしい)
その時受けた本作のイメージは、地下の犯罪組織のアジトに突入した警察の特殊部隊が、悪者をバッタバッタと格闘で倒し、途中で捜査シークエンスなんかもありつつ、ラストには派手なラスボスとのタイマンがある、という、香港ノワールの定番スタイルなのだが。
ところが、全然違った。
最初にマフィアのアジトに潜入するのは、新人ばかりの特殊な部隊。アジトというのは、マンションというより集合住宅、という感じ。
本作、最初から最後まで、ほぼこの建物だけで終始する、ワンシチュエーション作品なのだ。
実は低予算らしく、そう言われれば納得なのだが、場所を限定することで、アクションに特化することに成功している。
最初は特殊部隊らしく、アサルトライフルで、マフィア側も銃撃してくる。そこからナタ(マチェーテ?)対コンバットナイフ、最後は素手での格闘となる。私的には、最初から素手の格闘で良かったので、色々見られてお得、という感じにはならなかったけど(^^;)
とは言え、それぞれ頑張っていて、決して飽きさせない。
中盤での白眉が、隠し部屋に潜んだ主人公を探しに来た敵が、壁をナタでザクザク突き刺す場面。シチュエーションだけ見れば、よくあるのだが、最後のひと突きが、主人公の頬を5ミリくらい裂いて、血が滴るのがめちゃくちゃ痛そう(@_@) 刃に血がつくとバレるので、指をそっと添えて血を拭うのも凄まじい。
格闘的なラスボスは、冴えない小男。普通の映画なら、浮浪者の役でもやってそうなキャラなのだが、実はインドネシアの格闘技シラットの達人。この人、後に『スカイライン2』にも、舞台を無理矢理アメリカから東南アジアに移してまで登場する、エイリアンを銃器なしで倒しちゃう、あの人だ。
シラット•バトルそのものは、『イップ•マン』の詠春拳に、関節技を足したようで、近接格闘かつスピーディーだが、大技はあんまりないところで、映画的な必殺技/決め技に欠けるのかも。
ドラマ的には、最後、マフィアのボスと、内通してた警察の特殊部隊のボスとの会話。マフィアのほうの狂気の目が凄い。ここまで演技的には全然見どころなかったので、ラストに来て印象良くなったよ。
本作は、いくらマフィアで、公務執行妨害で警官を殺しに来て、実際に殺している相手とはいえ、容赦なく頭に拳銃を連射したり、首を切ったりと、やりすぎじゃない? と若干「引く」くらい、ガンガン悪者をやっつける。いくらインドネシアだからって、流石にこのへんは映画的な誇張だよね?? 「そういうもんだ」と思って見れば(2回目以降)痛快であろう。
後から宇多丸師匠の批評を聞く前に、見ている途中で思ったが、これ、インドネシア版かつ警察特殊部隊版の『ブラックホーク•ダウン』なのだ。『マッハ』や『チョコレート•ファイアー』にあった、ジャッキー映画的なスタントアクションではなく、銃撃に特化した感じ。やはり、『SPL』のような、ドニー的なリアルファイト路線である。