思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

街道をゆく(24)

『街道をゆく(24)近江散歩 奈良散歩』司馬遼太郎
☆☆☆★
朝日文芸文庫

とある地域を歩き、それにまつわる歴史や、司馬遼太郎が関わった人たちの昔話を綴るエッセイ。まるで、司馬遼太郎が現地で講演する際に、考えてきた内容と、道すがら体験したこと、そして思いを馳せた内容を徒然に語る、という感じを受ける。近江旅行のサブテキストに、と思って読んだが、まるでその用は果たさなかった(^^;)

「日夜、琵琶湖は汚されつづけている。あるいは、県のレベルをこえて琵琶湖の保全についての国民運動が起こらねばどうにもならゆ問題なのかもしれない」
琵琶湖開発に反対する武村正義知事が当選したことを端緒に、司馬氏の心配は幸いにも杞憂に終わった。他の日本全土の乱開発を思うと、稀有な例かもしれない。

「『水』(東京大学公開講座東大出版会刊)のなかで(略)工学部の高橋裕教授(略)カー•ウォッシュは(略)ヨーロッパではやらない。車を洗うときには雑巾のようなもので、拭いている。」
言われてみれば、外を走るものに、数十リットルの水を使うのは、贅沢の極みで、水道代が只みたいな日本ならではかもしれない。

「われわれが、芝生と松林の静まりのなかで、かつて25円で売りに出された国宝興福寺五重塔のしたをすぎてゆく幸福を得るようになるのは、明治政府が正気をとりもどしたおかげである。」