思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

血と砂の決斗


☆☆☆☆

最初は、北条の家臣で、主張が強いが腕も強いサムライ(大友柳太朗が演じる)が、門前で褒美を要求するところから始まる。こんな話、前に同じ枠で見たなぁ、と思いつつ、タイトルは調べてみないと思い出せない(^^;)
北条の殿様は、正論を語る家臣を押さえつけて、彼の討伐を命じる。四人の侍が彼を追う。
とある村へやってきた大友。野武士に娘が連れ去られようとしているところを、野武士を槍で刺し殺して助ける。
そのあとの展開はまんま『七人の侍』。違うのは侍が大友だけ、というところ(後に、一時的に追ってと共闘して五人になったりもするが)。これじゃ『一人(いちにん)の侍』だ(^^;)
本作で度肝を抜かれたのが、大友が野武士に怯えて、娘が拉致されても抵抗しない村人に正論(俺と一緒に戦え)を吐く場面。これ、野武士を中国に置き換えれば、そのまま、戦後の日本と中国や北朝鮮の関係と同じやん!? また、『北斗の拳』の無抵抗主義の村でラオウが語った暴論(正論)と同じでもある。
追手から逃れる大友との隠れんぼは、なんとなく『荒木又右衛門 鍵屋の辻』を思わせなくもない。ラストの追手の親玉で同僚だった男との決闘はまんま『用心棒』だとか、本作には黒澤映画のいいとこ取りのような野心作になっているのだ。
いざ野武士が攻めてきても、竹矢来を組んだり、米俵でバリケードを築いたり、はたまた大八車に竹垣で移動式の竹矢来で馬上の野武士を1箇所に追い込んだりと、さすがに今まで合戦で負けたことがないというだけある軍師っぷり。
石を投げるのは当たり前で、屋根から茣蓙とか、いろんなゴミを投げる(^^;) 殺陣も、達者な武士らしさが感じられるもの。
大友と、村の遊女との恋模様も面白い。最初は職業的に寝ようとし、次には好意を抱くが大友が了とせず、最後は大友が抱こうとするも、ことには及ばない。二人の心の距離とベクトルが、単純に一直線ではなく、X字にクロスして交わらないところがニクイ。全てが終わった後は、西部劇よろしく、二人で馬上の人となる。
本作を見るに、今の日本に足りないのは力づくで正論を語る強者(ケンシロウ?(^^;))による成功体験だよなぁ。