思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

最後の宇宙飛行士


デイヴィッド・ウェリントン著/中原尚哉訳
☆☆☆★
ハヤカワ文庫SF

解説に『宇宙のランデヴー』みたいとあれば、クラークファンとしては読まずにおれない。
たしかに、太陽系外から、葉巻型の巨大宇宙船が減速しながら接近する、というのは同作と非常によく似ている。
NASAから、凍結されていた宇宙船を引っ張り出して探索に向かう。
そこへライバルの宇宙船と競争になる、というあたりが21世紀の作品らしい。本作においては、中国からではなく、アメリカの民間宇宙会社、というのが特徴。ランデヴー一番乗りはそちらに取られたものの、しっかり炭鉱のカナリヤ的な役割を演じてくれる。のみならず、レスキュー対象かどうか、というドラマが生じるところもうまい。
ただし、内部に入ってからは、期待していた展開とはちょっと違った。『宇宙のランデヴー』的な、あくまでも理解できない事象が連続するものとは異なり、『リングワールド』的な探検ものなのだ。
とは言え、異なる生命体の設定としては面白いし、もしこれが長めの中編くらいの分量だったら、文句なく面白い。

以下ネタバレ

最初の探検時は、粘菌か触手か、というものに遭遇し、一旦撤収した後に腹を食われる、という展開。『プロメテウス』かSF小説エウロパ』みたいなホラー的ショックを味わえる。
再び奥へ向かい、実は葉巻型宇宙船と思われたもの自体がエイリアンであり、体内から無数の蠕虫が発生し、成長する、という展開。それが成長すると、磁気の羽根を持つ葉巻型になる、というのはうじ虫や、『デューン』のサンドワームなど、SFマインドをくすぐられる設定だ。それが分かってから体内を進むあたりは、ゲーム『沙羅曼蛇』か『Rタイプ』みたいで燃える。
体内に触手を侵入させて意思疎通するところや、結局主人公がその任に赴いて帰還できないところもホラー映画っぽくて良い。