思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

地獄の門

法条遥
☆☆☆☆
角川ホラー文庫

死んで地獄へ行った主人公が、自分が誰に殺されたのか捜査する……といえば『デッド・ディテクティブ』を真っ先に思い出すが、本作はちょっと違う。
ネタバレなしで書くのが難しいが、SFミステリにしてミステリSF、という感じ。
どんでん返しの1つは簡単に予想できるし、もうひとつは中盤に伏線ではなくはっきり明示されている。
それでもなお、楽しめたのは、その動機だ。本作の設定ならではの、実に胃もたれしない、振り切ったというか、あっけらかんとした、ある意味、無邪気なもので、好みは分かれるだろうが、私的には実に面白かった。
本作における天国とか地獄のシステムは、既存の宗教や倫理からは外れているが、「人間社会の都合で地獄ができているわけではない」というのも説得力があるし、SFとしと、本作独自の世界設定と理解すればすんなり入り込めるだろう。そういうわけで、本作はSFであり、ホラー要素はほとんどないし。
ただ、私の理解力が足りないのかもしれないが、ラストのオチはちょっと説明不足だと思う。何回か読み返したが、何をどうやったのか、もうひとつすっきりしなかった。