思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

凶悪

☆☆☆★

実話を元にした、という共通点もあるが、どうしても『冷たい熱帯魚』と比較せずにはいられない。予算の大小もあるのだろうが、位置付けとしては『冷たい熱帯魚』ー『凶悪』ー『孤狼の血』みたいな感じ。
冷たい熱帯魚』には、予算があまりないならではの、良くも悪くもの荒々しさ、照明も凝っていない故の生々しさがあった。本作は、しっかり画面が映画らしく構築されている。
語り手ともいえるピエール瀧が、囚人面会室での、普通に見える面と、ヤクザとして犯罪を繰り返していた時代との二面性があるのも、『冷たい熱帯魚』のでんでんと同様。
主人公の山田孝之が、記者として捜査されていない事件を、ピエールから聞き出す、というのが物語。事件というのは、ピエールが、ヤクザとして信頼を裏切られた相手を殺したり、「先生」と呼ばれている親分たる不動産ブローカーが殺した死体を始末したりする。それを語る、という形での回想シーンが映画の真ん中に挟まっている。回想シーンが、ある種、幻視という形で山田孝之の現在の捜査シーンからシームレスに始まって、終わるのが面白いところ。
それはともかく、山田孝之の家庭の事情が描かれるのは、最近の内外問わず映画の悪いところ。そんなのどうでもいいやん。隠された事件をどうやって暴くか、だけで。一応、先生がやっているのが高齢者の持っている不動産を様々な形で消して、金儲けする、という繋がりはあるのだが。山田孝之の妻が、夫が家を顧みないせいで義母となるボケ老人の世話に耐えかねて離婚届を書くのに、結局離婚してないのも「なんやねん?!(´д`)」という不要などんでん返しだし。
ピエールが、死体の始末はともかく、ヤクザとしてやってる所業の極悪さは、『孤狼の血』シリーズに勝るとも劣らないもの。手を引こうとして弟分の妻を拘束して、クスリを射ちながらレイプするあたりは、ほんと酷い。あとは、老人を酒の飲み過ぎで死んだことにするための、無理やり酒を飲ませた後で、みんなで電気ショックを浴びせるところとか。