思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ブラインドサイト(下)』
☆☆☆★

テッド・チャンによる日本版オリジナルの解説に詳しいが、本作は意識をテーマにしたSFである。ファースト・コンタクト云々はおまけに過ぎないとさえ言える。
解説にもあるように本作の登場人物設定や主人公の過去のエピソードは全てその意識とはどんなものかを描くためにあり、それはエイリアンの設定すら同様と言って過言ではない。
ちょっと不満なのは、吸血鬼を設定する必要性と、詳しい作者自身による解説がある(このへんはハードSFの醍醐味と言える)にも関わらず、宇宙船の説明がないこと。
この宇宙船、脊椎とか生物的なネーミングで説明されるのだが、単なる擬人化(?)なのか、本当に遺伝子操作的に作られた宇宙船なのか(バクスターにそんなのがあったっけ)分からないのだ。
作者自身による解説と言えばそれに144にも及ぶ参考文献リストがあるのが凄い。こんなのは前代未聞だが、さすがは元プロ研究者、というところか。

各章の冒頭に紹介されているエピグラムから
「なぜ上位の存在に慈悲をもって祈り記紀届けてくれるよう祈るのか?自分は下位の者に慈悲を示そうとしないのに。
ーーピエール・トルベツコイ」

ブラインドサイト<下> (創元SF文庫)ブラインドサイト<下> (創元SF文庫)
ピーター ワッツ テッド チャン

東京創元社 2013-10-30