思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『「女帝」の誕生』関裕二
☆☆☆★
講談社

改めて考えると、現在でも右側の人は、女系天皇けしからんとか、男系こそ天皇・国体の本義、みたいなことを言っているが、それまで男だけだった天皇に女がなるということ、同じ人物が2度も即位するなど、当時は前代未聞、驚天動地の出来事ではなかったのか? それを押してまで女性天皇が成立した、という事情は、本書では納得できなかった。そもそも、謎だという認識自体が世間にも学会にもない気がする。

蘇我馬子は、百済からもたらされた石造仏を礼拝し、仏殿を建て、3人の女性に得度させてこれを崇めた。」
これ、いかにも日本(神道)的な発想。仏教の本来の教義からすると、まず女は度し難し、というものなのに、女性から帰依させるのだから。

蘇我氏との因縁が深い元興寺。物部系の文書である『先代旧事本紀』。蘇我も物部も、かつての巨大豪族であり(略)その2つの豪族と関わりのある文書が、そろいもそろって『日本書紀』と相容れない記事を書き残していた。」

物部氏を「瀬戸内海」、蘇我氏を「日本海+東国」とみなすことによって、6世紀の両者の対立と抗争の根源が見えてくる。「瀬戸内海」を中心とする豪族層ら守旧派は、既得権益を守ろうとしただろう。これに対し、改革事業を通じて、新たな中央集権体制を築こうとする「日本海+東国」勢力が台頭した。」