思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

源平の怨霊

高田崇史
☆☆☆☆★
講談社

450ページにおよぶ、質・量ともに歴史ミステリ作家の作者の精髄ともいえる傑作。
源平合戦、つまりは鎌倉幕府成立にまつわる謎を、現代の殺人事件などという狭雑物ぬきでまとめた、純粋歴史推理だ。純粋歴史推理って、参考文献にも挙げられている『成吉思汗の秘密』とか『忠臣蔵四十七士の○○』くらいと、なかなか少ない。
物語は、『吾妻鏡』などを順に追う形で、源平の騒乱に隠された謎を解いてゆく。歴史の勉強にもなり、もちろん、常識の裏に隠された真実にも瞠目させられる。
しかし、この時代は権謀術数と、戦と暗殺だらけで、

以下、ネタバレ

安徳天皇が女性」というのは、逆に一般には男だと思われてるの? と不思議に思ったくらい。それよりも、壇ノ浦の戦場での女御たちの運命大陸的な陵辱と、同じ、というほうが衝撃。

「時政たちは(略)自分たちの血筋以外の人間は、残らず殺し尽くした。更に源氏と違って平氏の彼らは、自分たちの血筋を非常に重んじた」
いわゆる源平騒乱とは、こういあハウダニットであった、ということ。