思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『カプリコン1』

☆☆★

確かに、導入は凄く魅力的。発射直前、数分前の有人火星探査ロケットから、宇宙飛行士3人全員が連れ出されるのだ。その後、ロケットは何事もなく発射される。要するに、「アポロ11号は月に行かなかった」説の、火星探査版である。
最初は理屈で説得しようとした博士だが、それが3人には通じないので、逆らえば上から、家族の乗った飛行機を爆破されることを伝え、情で(?)協力させる。
ただ、そのテレビの視聴者を欺く手法が酷い。2点ある。まずは、火星の低重力を表現するのに、単純なスロー再生をしていること。こんなの、予め撮影しておいて、特殊効果を足すでしよ?
そして、致命的なのは、火星と地球とのビデオ会話。ちゃんと作中で、「光の速さで20分かかる」と言っているにも関わらず、1秒くらいの時差で会話しているのである! 百歩譲って頭の悪い観客向けに、これが陰謀ごバレるキーになっているのかと思いきや、これは最後まで問題にされないのだ! これから見ても、本作がSFではなく、単なる国家陰謀もの、サスペンスに過ぎないことがわかるだろう。
ことに後半3分の一くらいは、SFでもなんでもない、ただの逃亡劇になってしまった(´Д`)
風呂敷の広げ方は最高だが、畳み方は何のひねりもない残念作。