思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『碆霊の如き祀るもの』

三津田信三
☆☆☆★
原書房

久しぶりに読んだこともあるのかもしれないが、「あれ? もっと骨太で面白いシリーズだったのに……?」というのが最初から最後までの印象。
まず、主人公とは何の関係もない、怪談を四つ読まされるのがキツイ。それだけで100ページ以上にもなり、多忙な時期でもあって、これだけで2日もかかった。作者の他のホラー短編集よりも硬派な話、ということもあるのかな?
主人公たる刀城が出てきてからは、編集者・偲との掛け合いもあって、スイスイ読めるのだが……。
最初に四つの怪談が出てくる段階で当然と見るべきだったが、殺人事件が四つ起こる。刀城は、怪談の謎と事件の謎を挙げて行くと、トータル70にもなっている。
これはメチャクチャ複雑かつ長い解決編になるかと思いきや、意外とあっさりまとまっている。
ツイスト(どんでん返し)を、新事実の発見や、ライバルとの推理合戦ではなく、探偵が思考の過程をワトソン役に話すことで描く、というのが本作(如きものシリーズ)の特徴。本作でも、3つほどの偽の真相が挙げられるが、最後の真相は、合理的ではあるが、衝撃度という点ではあまり強くない。オチとして、『火刑法廷』的な超常現象があるのはシリーズのお約束(読書サービス?)。

以下、ネタバレ

私の推理として、唐食船と碆霊の謎は、飢えに窮した村人が、通りかかった船を襲って食人していたのかと思っていたのだが、偽の推理としても出てこなかったのが残念(^^;)