思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『日本懐かしジュース大全』
☆☆☆★
タイトル通りの懐メロ本。「こんなのあったなぁ……」というのが3分の1、「こんなのもあったのか」が3分の1、残りは「あの商品の最初はこんなのだったのか」というもの。
紙幅の関係もあるのかもしれないが、広く浅く、という感じ。厚い紙でオールカラーじゃなくても、白黒ページでもいいから、本の完成度として2倍の情報は欲しかったところ。

『吸血姫夕維 最終章(上)』垣野内成美
☆☆☆★
秋田書店

私が高校生の時に始まったマンガが、ついに完結する(同人誌で知ってたけど)。
とにかく設定がややこしいので、冒頭の家系図と人物紹介がありがたい。
読んでいる途中は、いつもと変わらない感じもあり、「ホントに終わるの?」という感じだが、読み終えてみれば、これまでの数々の伏線を引っ掻けて来ているのが改めて分かる。『美夕』はホラー、またはサスペンスだが、『夕維』は基本少女マンガなので、時間的にも空間(コマ割り)的にも、間が多いのだ。
今更再確認するのも遅すぎるが、『美夕』にくらべて一歩距離があったのは、そのせいかもしれない。
まだ上巻なので完結していないが、下巻も同時発売なのに、こちらにも(内容からして、下巻にないってことはないよなぁ……?)あとがきがあるのが嬉しい。


模倣犯(5)』宮部みゆき
☆☆☆★
新潮文庫
作中で、似たような事件がフィクションでなかったか探すシーンがあるが、そこは是非とも「宮部みゆきが『模倣犯』っていうやたら長い小説をだしてたなぁ……」と入れて欲しかったなぁ。メタミスというより、お遊びとして。こんな長い小説、それくらいの息抜きがあってもバチは当たるまい。週刊ポストNHKだけは実名で出てくる。後者はともかく、前者は不思議だったが、やっぱり連載誌だった。
「人殺しが酷いのは、被害者を殺すだけじゃなくて、(略)残ったまわりの人間をも(略)じわじわ殺してゆくからだ。そうして腹立たしいことに、それをやるのは人殺し本人じゃない。残された者が、自分で自分を殺すんだ。こんな理不尽な話はない。」
本作のテーマはズバリこれ。単独殺人ではなく、連続殺人だから関係者が多く、したがって話が長くなる、という関連(悪循環と言いたいくらいだ)なのだ。何しろ、単なる死体の発見者にまで、その背景なり人となりを描くんだから、やってられない┐(´д`)┌


以下、ネタバレ



「彼のやったことは前代未聞だ。空前絶後だ。自分でさんざん人殺しをしておいて、その罪を他人になすりつけて、いけしゃあしゃあとその無実の人の遺族の味方をしてみせる」
要するに、犯人=探偵……というよりも、最初(1巻終わりまで)は普通のミステリーだが、2巻から倒叙ものに替わる、という構成のほうがミステリーとしてはかなり珍しい。『轢き逃げ』なんかが代表だが、最初に犯人視点で犯行を描き、第2部として、それを追う警察を描く、というのはよくある倒叙もののスタイルなのだが。
当然ながら、本作でも、どこで犯人がボロを出すのか、というのが興味の焦点となる。
本作が本格ミステリではない、あるいはそうだとすれば致命的な欠点は、真犯人が2巻で開示された人物と同じであること。
探偵役かと思われたルポライターの滋子が犯人のアジトを見つけたと思ったら、警察に先を越されていたこと。特に後者は致命的で、彼女がいなくても事件は解決していた、ということじゃないか。もちろん、日本警察の捜査力の高さを示す、という意味では、そのほうがリアルなわけだが。
じゃあ、滋子はただのピエロかと言えば、滋子の失態を吊し上げる目的でセッティングされたテレビの生放送で、犯人から自白を引き出す一撃を発する。ただし、これはそれくらいのカタルシスがないと、こんな長い話を読まされた読者が納得しないからに他ならない。事件解決には何ら寄与せず、そのための役割しかないのだ。こんな間抜けな探偵は、『うぶめの夏』の関口くらいじゃないだろうか?
タイトルから、次々に模倣犯を生み出す、教祖的なカリスマ性のある犯人かと思っていただけに、大いに期待外れ。あ、そんな話が読みたけりゃ『デスノート』を読めばいいのか(^_^;)
いちおう、犯人を追い詰めるキーワードとなる言葉ではあるが、短編ならともかく、こんな大長編で「看板に偽りあり」をされると読後感は大いに減退(減点)される。
『ピース浩一の華麗なる犯罪ショー』とかいうタイトルならこういう不満はなかったのだが(爆)