思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『スマホを落としただけなのに』

『スマホを落としただけなのに』志駕晃
☆☆☆★
宝島文庫

タイトルからだいたいの展開は予想でかたが、ちょっと違ったのは、被害者視点だけでなく、開始そうそうから、犯人視点、警察視点の3つのストーリーラインがあること。
このあたり、七尾『カエル男』と似たテイストを感じた。
これによって、長所と短所が発生している。
長所は、犯人視点によって、ネット犯罪なかんずくクラッキングの方法について、あからさまな説明ゼリフで展開を留めることなくリーダビリティを確保できること。そして、警察視点によって、ある程度以上のミステリ読みには、叙述トリックあるいはそれに類する仕掛けがあるであろうことが推測できる点だ。
欠点は、誰しもが経験する落とし物、スマートフォンを落としたことから、日常が変容していくサスペンスまたは恐怖が、視点が切り替わるごとにストップし、恐怖のドライブ感が弱くなっていること。
せっかく誰もが関心を持てるテーマ的なので、ミステリ的なツイストを犠牲にしてでも、今回は被害者視点に絞ったら良かったんじゃないかなぁ……。
ちなみに、純粋に本格ミステリとしてみると、本作は、フェアプレイではあるが、伏線があからさまなので、騙された感は弱い。