思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ジェリーフィッシュは凍らない』市川憂人
☆☆☆★
東京創元社

文庫の帯で興味を引かれたのだが、読み終えてみれば、これはネタバレじゃない?まあ、それを見ていなくても、ある程度以上にミステリを読んでいる人なら、「あぁ、これはあの名作のオマージュだな」とピンと来るのかもしれないが……。
事件の始末・全容は半分くらいで終わってしまい、後は捜査編と解決編、という感じの構成。そこまで複雑な事件でもないが、事細かに独白してくれるのは、警察相手にはちょっと芝居がかった構成かな……と感じた。
また、特に警察パート(クローズド・サークルでもないのに、二人しか捜査していない)で、女警部と日本人部下(こいつの立場もよくわからん)の人称がはっきりしないのも気になった。
トリックの細部まで完璧に推理しないと気がすまないド本格マニアか、本格ミステリー全般にそこまで馴染みながない人が最も楽しめるのでは?
本作の特徴である、80年代のU国(アメリカのことだろう)を舞台にし、ジェリーフィッシュなる「真空」気球というフィクションが活かされた内容かというと、少々疑問。ある意味ではSFミステリーと言えるのだが……。また、気球が舞台の本格ミステリとしては、『見えない精霊』(曖昧記憶)があるが、そちらとはだいぶ毛色が違う。あちらは地味なのに対して、本作のほうがあちこちはっちゃけて若さあふれるというか、新本格っぽい。

以下、ネタバレ

大小かつ種類もさまざまなトリックが組み合わされたが故の、長い解決編。物理トリックのメインは、想定の範囲内だったので、そこまで驚きがなかったのが評価が上がらなかった要因。複雑かつ精緻なトリックというべきか、私のようにめんどくさいと見るか……。
意味ありげな日本人刑事に特に何もなかったりという件も。