思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

♯映画


華岡青洲の妻
☆☆☆☆

市川雷蔵高峰秀子主演。原作小説は有名すぎるのか、未読だが知ってはいたし、後に『風雲児たち』で華岡青洲まわりは軽く触れられるので、別に読んだり観たりする必要はないかと思っていた。今回は、「ながら見」できる邦画がないと思ったので録画して、観たら、ファーストシーンが綺麗すぎて、即「これはながら見できへんぞ」とスイッチを切り替えた。4Kリマスターではあるが、それにしても繊細かつ美しい画面だ。
主演は月形雷蔵とあるが、事実上、高峰秀子若尾文子(違うかも。要確認)のダブルヒロインだ。
原作小説の作者が女性ということもあるが、華岡青洲の父の妻である高峰秀子の、美しく人格も立派でありながら、女としてひとりの男を取り合う業のようなものの繊細な描写が素晴らしい。
もちろん、本題ともいえる日本初の全身麻酔の発明に至るまでの苦労や、その仕組みや経緯もよく分かる。
当時は現代のように実験台にラットを使うという風習はなかったのか、犬や猫の子供をたくさんもらってきて、代わりにしていたというのも知らなかった。ことに本作では猫ばかり実験台にされているで、猫好きの人は見るのに要注意!
華岡青洲の妹が二人ともガンになったりとか、医者だからこそ病人が死ぬと辛い、なども、普段気が付かない視点を教えてくれる描写だ。「医者は亡くなった人を『寿命だ』とは思ってはいけない。助けられたはずだ、と思わなければ」という台詞とか。
華岡青洲の父も、繊細な市川雷蔵とは正反対の大雑把で豪快なキャラながら、医学にかける信念は父親譲りだとわかるのもうまいところ。
いわば、史実に基づいた『赤ひげ』であり、江戸時代の野口英世なので、伝記として勉強になるし、先述したように、映画としてよルックも素晴らしく、秀作と言える。