『AV女優のお仕事場』溜池ゴロー
☆☆☆☆
ベスト新書
ベテランAV監督による、業界エッセイ。
ある種、大手かつベテランだからかもしれないが、一般的なイメージとはずいぶん異なるのが意外だった。本書中でも触れられているが、『AV女優』に出ているような、ある意味で病んでいるような人物はほとんど出てこない。
大小の事務所に所属し、事務所は所属タレントを商品として管理する。すぐに消える人も多いという点では、アイドルやモデルの業界と大差ないのかもしれない。
仕事内容が、ステージに立つか、ベッドかの違いだけで。実際に、撮影を終えれば、それ以上にスタッフに乱暴されたりはしないのだ。そもそも、現場としてレンタルしているスタジオ料金を超過する制作費の余裕もないとか。それこそ、AVである、面接に来たらそのまま乱暴される、というシチュエーションじたいがAVによるフィクション(演技)という事に気がつかなければいけない。テレビのバラエティやドキュメントが、「やらせ」だと言うなら、AVこそその最たるものかもしれない。
それは、女優が「感じ」たり、淫乱な表情を浮かべるのも同じこと。あくまでもそう演じるからこそ、女優と呼ばれるのかもしれない。
「年間一万本以上のAVが新作としてリリースされている」
「2000人の女優の約8割が、なんらかの理由で1年も保たずにAVを引退し、翌年には同じ数だけの女優が補充される」
「元祖・潮吹き女優といわれたのは、1988年にデビューした中野美紗(仮名)(略)ところが、2000年をすぎたある時期を境に、突然このおかしな現象がAV女優のスタンダードとなった。」
これは興味深い事実である。もしかしたら、フェラチオなんかもエロ雑誌が出る戦後になるまでは一般的には知られていなかったかも……?
「アマチュアに近い男優にまで検査させるからこそ、性病のリスクに関してAV業界は一般社会よりも安全」
これも、イメージとは違う。零細やアングラ業者はまた違う、ということかな?(どんな業者にも犯罪的な人間はいるものだし)
「現場はいつも愉快なスタッフたちや美しい女性の笑い声にあふれ、鬱になった人間など、この20年でひとりもみたことがない」
ってことはあの映画で描かれてたことは、ほぼ正確だったってことか……。