思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ジーサンズ はじめての強盗』
☆☆☆☆

同じく強盗映画『オーシャンズ』に引っ掛けた(最悪の?)邦題で、原題は「Going in Style」。昭和であれば『これが俺たちのやり方だ』とか『スタイリッシュに行こう!』みたいな邦題になるところでは?
主演はモーガン・フリーマンマイケル・ケイン(『キングスマン』の執事的な役が印象的)。脇役には『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のクリストファー・ロイドが出ている。まさにジーサンたちが活躍する映画。
基本的には陽性のケイパー(コン・ゲーム)ものだが、社会的弱者の反発としての映画でもある。作中でも二度「老人は敬うものだ」というセリフが印象的なタイミングで使われる。
あらすじを見たときは、てっきりじいさんたちが職業経験を活かして作戦を立てるのかと思いきや、なんと3人とも全くの素人。ツテを頼って、プロの犯罪者に手取り足取り教えをもらう、という展開なのだ。その前に、小手調べ(予行演習)として近所のスーパーに万引きに入るが、あっさり捕まってしまう、という展開が楽しいし、ちゃんと手順を踏んでいる。
実行手段自体は(冒頭で主人公が巻き込まれた強盗をモデルにしているとはいえ)実にテキトーで、こんなんでうまくいくもんかねぇ?と思うし、実際に少女にバレそうになるのだが、少女が面通しの際に気まぐれ(同い年の孫の写真がついた腕時計をしていた、というだけの理由)で嘘の証言をするから助かる。とはいえ、終盤で指南役の彼が冒頭の強盗だったことが分かる、という構成もいい。
ラストで、チームメンバーだった一人から腎臓移植をして、てっきりそれが元で死んでしまった弔辞かと思いきや、結婚式、というオチも楽しい。
とにかく、全体としては陽気かつ、社会はメッセージ(銀行の冷血、老人を敬わない)などもちりばめつつ、ケイパーものとしてアリバイの作り方など、どれもが及第点以上にまとめられた佳作。
もちろん、大御所たちの名演技によって盤石の安定感があることも大きいだろう。