思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『日本のいちばん長い日』☆☆☆☆
こういう事件があったのは知っていたので、あくまでも映画として見た。
ディテールとしては、詔勅の内容は、あくまでも立件民主主義的に文言の一字一句まで閣議で決めた、ということが分かったのが興味深かった。ただし、天皇による終戦の決断が憲法違反(超法規的)である、ということの重大性はあまり描かれていなかった感じ。
映画の基本としては、戦後日本人では、普通のことだと思われている、終戦に当たって全国民があっさりとそれを受けれたと思われていたが、グローバルスタンダードなら、本作のように徹底抗戦を訴える人がいるのが普通だ。
なので、現代の目でみると、いわゆる反乱軍の将兵たちが愚か、または狂気にしか見えないので、その辺りをどう受け取るかによって評価が別れるのかもしれない。
群像劇として、多数の登場人物がそれぞれの役割を果たしつつ、テンポよく切り替わりながら進んで行くのが長いのに飽きさせない作品だ。

日本のいちばん長い日 Blu-ray日本のいちばん長い日 Blu-ray

東宝 2017-11-03


『シルトの梯子』☆☆☆★
01年に原著が出たのに、後発の作品より後に翻訳されたのは、余りにハード過ぎるからだろうか。
なにせ、いきなりグラフから始まる長編なんて前代未聞。数学理論が世界を侵略する短編『ルミナス』や、特異点の向こう側に行く、という点では『プランク・ダイブ』を融合させたよう。
個人の意識はデータベースにあり、好みによって肉体を構成する、という設定は、クラーク『都市と星』のダイアスパーのアップデート版とも言える興味深いもの。
二部構成だが、一部は全体の1割くらい。ほとんどプロローグ的な位置付けなのかと思いきや、意外な帰着。ただし、個人的には、解放して終わるのがSFの醍醐味なのに、逆に小さくまとまっちゃったかな、という感じも。

シルトの梯子 (ハヤカワ文庫SF)シルトの梯子 (ハヤカワ文庫SF)
グレッグ イーガン 山岸 真

早川書房 2017-12-25


漂流教室(1)』
☆☆★
小学生くらいに映画版を見た記憶があるくらい。現在の目で見ると、ポーズは昭和初期だし、展開も異常にのろいし、無駄な大コマも多い。ツッコミポイントだらけほとんどギャグマンガである。小学校が校庭ごと未来らしき時空にタイムスリップする、という展開を描くだけなら、普通に50ページでおつりが来るのに、文庫でまるごと一冊費やしているのだ。途中に気が狂った人たちの描写があるにせよ。現在でも鑑賞に耐えるのは、サイコ描写だけだな。

漂流教室 (1) (小学館文庫)漂流教室 (1) (小学館文庫)
楳図 かずお

小学館 1998-07-01