解説には『今まで読んだことがない本』とあるが、解説者は昨今のラノベや深夜アニメを見たことがないのか?
歴史上の人物が現代(本作は未来の物語だが)に蘇る話など、掃いて捨てるほどある。
まあ、「歴史上の作家のクローンが、図書館の『蔵書』として館内で住んでいる」という狭い意味での設定は前例がないとは思うが……。図書館に住んでいる探偵なら、『ゴシック』とか、他にもありそうなもの。
本作はそんな主人公が、貸し出された先で遭遇する事件を解決する、ハードボイルドSF。
あちこちの図書館に、同じ人物のクローンがいる、という世界観を味わう中盤は全くの蛇足で、ミステリとしては最初と終盤、最後の部分だけで十分な、中編を水増しした感じ。水増し部分は、それの三倍くらい。
未来が舞台だが、ほとんど4〜50年代のSFを読んでいるようで、近年の科学的知識は全く必要ない。『鋼鉄都市』より古臭い、ファンタジーと言ってもいいくらいのSFである。
サイエンス・フィクションとしての評価は☆☆で、純粋にミステリとしてのプロットトリックそのものの評価は☆☆☆★くらい。
書架の探偵 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ) ジーン ウルフ 青井 秋 早川書房 2017-06-22 |