思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『2312(上)』
☆☆☆★

基本プロットは、水星で起こった事故の原因を探るサスペンス。
それに未来世界の人類の生態、テラフォーム、太陽系全域(水星〜土星および小惑星)に及ぶ生活圏、コンピュータそして娯楽などを描いているため、やたは長くなっている。
その中にはクラシック音楽における蘊蓄があるのは『永遠なる天空の調べ』を書いた作者らしい。
ハードボイルドまたはハードSF的に書いてくれれば、谷甲州作品や、『女王天使』みたいな仕上がりになるのに、ブロックバスター的な水増し部分が気に入らない。
何よりも主人公の性格に全く好感が持てないのが厳しい。奇しくも、主人公に惚れる人物も理由が分からないのがなんとも…(^_^;)
本編(章)の合間に、設定の断片が入るのは、巻末に用語解説が入るよりはありがたいのかな…?
また、それと並列的に、「メモ」なる文章の断片もある。犯人(水星の事件がテロであることは上巻の後半で明かされることなので、ネタバレかな?)の覚え書きなのか?

なお、波を「広重的」と書いているが、「北斎」でしょ?(´д`)

2312 太陽系動乱〈上〉 (創元SF文庫)2312 太陽系動乱〈上〉 (創元SF文庫)
キム・スタンリー・ロビンスン 加藤 直之

東京創元社 2014-09-20