思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ルパン三世
☆☆★

全然期待はしてなかったけど、まあその通りだった。そもそも、この実写版に期待した人って誰もいないんじゃないだろうか?
とりあえず画面(ルック)は香港映画くらいには良かった。ハリウッドには届いてないけど。照明とカメラがうまいのかな。
アニメでは宮崎アニメの印象が強いが、それを実写でやるのもおかしいので、ハードなスパイアクションになっている。『ミッション・インポッシブル』路線というべきか。そのため、おまけに、(原作マンガや、宮崎アニメになる前のアニメは知らないが)ルパン三世と言えば「銃は撃つが人殺しはしない」のがセオリーなのに、バンバン人を殺しまくっている(これも香港映画っぽい)。どうせなら『オーシャンズ11』的な路線を狙うのが正解だったと思うのだが…。まあ、北村龍平監督を抜擢した時点でそれは無理というものだろう。
中盤のモロに『マトリックス・リローデッド』をパクったシーンは恥ずかしかったなぁ…。
そもそも、ルパン三世を実写でそれっぽくやると(まあ、意外と頑張ってる/似てると及第点はつけられるのだが)、言動が中学生にしか見えないのが根本的な問題だと分かる。でも、五右衛門だけはキャスティング、アクションともに失敗。
中盤のオークション、クライマックスの潜入(というより突撃)に、伏線やロジックに説得力がないのは改めて言うまでもないだろう。
そもそも、大野雄二が曲を書いてくれなかった時点で敗北は決まっていたのかもしれない。プロデューサー、監督がオファー自体をしていなかったとすれば(演出プランの失敗が)なおさら。

また、細かいことだが、メインキャストの口の動きと台詞が合っていないのも気になった。外人俳優も多いので、撮影時は英語?とも思ったが、口の動きを見るとそうでもなさそうだし。アフレコがヘタなだけなのか、間を変更させた演出の問題か…。そこ、次元だけは良かったけど。


史上初の英米の各賞を7つ制覇、ということと、カバーイラストの恰好良さに、ほとんどジャケ書いした一冊。
ちなみに、この戦艦は「主人公」なのだが、どうにも既視感があると思ったら、グラディウスビックバイパー、『ガンダムW』の双胴母艦(この2つはいずれもカトキ氏デザイン)、カラーリングはミレニアム・ファルコンといった感じ。
内容については解説を先に読んだほうがいいかもしれないが、とにかくとっつきにくい。その要素は大きく2つ。
まずは未来の異世界ということで、性別の概念が希薄になっていること。これは読み終わって解説を読むまで気づかなかったのだが、三人称代名詞が全て「彼女」であること。さらには外見の描写でも、男性とも女性とも特定できない(ように)と書かれている。ほとんど、男女の区別がない世界と捉えたほうが手っ取り早いだろう。アニメ化したり、全員女性で(宝塚か!?)実写映画化すればさぞ面白いだろう。
もう1つは、現在パートと過去パートが交互に語られること。現在パートでは、放浪する主人公が、千年間眠っていたため、現在はドラッグ漬けになっていた昔の艦長を助けて彷徨う物語。過去パートは、主人公がそんな境遇に陥った理由を探る。
ただでさえ理解しづらい設定なのに、こんなややこしい構成をとる意味はない。まだ各章ごとに少しずつ謎の一部がリンクして明らかになるならともかく、そうでもない。はっきり言って時系列が現在に一本化される(過去編の挿入が終わる)17章(318ページ)までは、過去編である偶数章だけ先に読んで、317ページまで行ってから奇数章だけ読んだほうが良いとオススメしたい。
戦艦自体の人工頭脳をコピーしたロボットのような「属躰(原題であるAncillaryの訳語)」の設定が魅力的。読んでいると、一見、アンドロイドのように錯覚してしまうのだが、作中で最初に説明されている通り、捕虜や被征服民を改造・洗脳した非人道的なもの。全員が意識を共有しているというと、どうしてもコピーロボットか、オートマチック・フラワーズ(ファティマ)か、『キルン・ピープル』を連想してしまうのだが…。
この設定は戦艦のオペレーションのためだけでなく、皇帝にすら用いられている。このあたりがコピーロボットみたいなところで、ほとんどSF的「分身」と言っても過言ではない。
物語は映画『英雄』のような、皇帝暗殺のストーリーへと収斂していく(というより、主人公の読者に隠されていた目的がそれであることが次第に明かされる)。こういう設定だから、本来は、属躰を存分に駆使した艦隊戦を読みたかったのだが…。

これが7冠というなら、『ハイペリオン』は9冠くらいとってもおかしくないと思うのだが…。
帯にある海外のレビュー文についても、読んでいなくても書けるほど内容がない(^_^;)

あと、日本人だから気になるのかもしれないが、名前が「スカイーアト」とか「アナーンダ」とか、どうにもダサいのも惜しい。

ちなみに、邦題はいかにも創元SF文庫的なセンス。原題を直訳されば『戦艦「正義」号の属躰』という意味になる。正義というのは、作中に登場する「トーレンの正義」という戦艦名である。

叛逆航路 (創元SF文庫)叛逆航路 (創元SF文庫)
アン・レッキー 鈴木 康士

東京創元社 2015-11-21


ドイツのパンター1輌を主役にした1巻で完結する中編。
そこにルーマニアパルチザンと自称する少女オルガと、次にはSSの少女(こちらは女性である意味はなく、単なる読者サービスだろう)が合流する。最終的には映画『ローレライ』みたいな話になる。
それまでは、ソ連軍の戦車の特徴を表した戦いに、新鋭戦車スターリン、さらには敵であるはずの米軍のパットン将軍まで登場するサービスっぷり。
クライマックスバトルは、意外にも地味ながら、ある種のリアリティある結末になっている。
オルガの正体については、あとがきで原作者が書いている。これによってクライマックスの彼女の行動に納得がいかなかったところが補填されるのだが、かといって、ちょっと作品のリアリティレベルが崩れる設定だと思うのだが…。まあ、ルーマニアってことで、わからなくはないのだが。

豹と狼―ドイツ軍5号戦車1944 (ジェッツコミックス)豹と狼―ドイツ軍5号戦車1944 (ジェッツコミックス)
中里 融司 かたやま まこと

白泉社 2009-02-27