思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『残照』辻真先
☆☆☆

驚天動地のトリックはないが、スナック「蟻巣」が看板となれば、『アリスの国の殺人』からの(出版当時からでなないのだが)ファンとしては、読まない訳には行かない。
ここ十年くらいの単発辻作品と同じく、過去の殺人を現在推理するスタイル。
戦後すぐの、二階での墓石殺人と、アニメ創成期の密室解体殺人がある。
探偵役は蟻巣のメンバーの合作で、可能克郎は出てくるが、ポテト&スーパーや鉄道ミステリの父子は出て来ない。
ハウダニットよりも、ホワイダニットを重視した、ミステリー「小説」である。
それよりも、ファンには見逃せないのが、あとがきにある各キャラクターのモデル公開(暴露?)だ。ママのモデルが藤田淑子だとか、克郎が愛川欣也なんてのは意外では?ある意味では本作最大の真相編かも。
ちなみに、本作のヒールである野母崎プロデューサーのモデルは明かされない。でもまあ、ある程度アニメ業界に詳しい人なら、『ヤマト』の西崎であることは簡単に連想できるであろう。

残照 (アリスの国の墓誌)残照 (アリスの国の墓誌)
辻 真先

東京創元社 2016-05-21