思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『日本人の土地神話山本七平
☆☆☆☆
日本経済新聞社
なぜ日本人は土地に執着するのか?それを鎌倉時代まで遡り、○○式目などの数々の古文書を元に明らかにしたもの。後半は土地や測量の歴史に関するエッセイ集。
結論は、前半の結句であるここに尽きるのかもしれない。
「現在、土地問題に関してさまざまなことが論じられ、抜本的とされる案も提唱され、諸外国のさまざまな事例も報道されている。もちろんそれらには参考になる多くの事項があると思うが、長い伝統を持つわが国の土地所有形態を無視しての議論は余り意味がないのではないかと思う。というのは日本における土地所有の形態は鎌倉時代以来、一つの歴史的流れが現代までつづいており、その間に、国有・公有といった大変革が行われたことは、一度もないからである。」
よく日本では車輪や車両の発達が遅れたという批判があるが…。
「陸上輸送も殆どが川と運河であった。関東平野の米も、実に川と運河だけですべて江戸まで運ばれてきたのである。日本はしばしば「道路なき国」といわれたが、これはむしろ「道路の必要なき国」であったというべきであろう。(略)これは幕府に土木の能力がなかったということではない。その証拠に河川の改修となると、相当な大工事をしている。」