例によって作者自作の絵には大して意味はないが、メタ趣向(というより作中作)が嬉しい佳作。
作中作の幻想小説的な趣きと耽美趣味(山本タカトのカバーイラストは相変わらず美しい)と、不意に出現する連続殺人。
一見、本格度が低いと思わせつつ、ちょくちょく引用(紹介される)海外の名作(私は読んだことないけど)など、実はかなりのくせ者でもある。
やはりなんといっても数年前の中越地震などを取り込んだことや(地震そのものをテーマにした谺健二よりも、余震をテーマにしたところが違うところ)、なにより読者が考えた予想をまんまとレッドヘリングとして裏切った予想外の一撃が素晴らしい。
誰のための綾織 (ミステリー・リーグ) 飛鳥部 勝則 原書房 2005-05 |