思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『勢揃い東海道』☆☆☆☆

片岡千恵蔵清水次郎長シリーズの第4弾らしい。
いろんな意味で「仁義なき戦い」シリーズの『北陸代理戦争』を連想した。
おなじみの俳優たちが毎回違う役で出演していること、あちこちの組のカシラが離合集散するところ、などがそれ。
本作では、最初こそ、美空ひばり絡みのパートが湿っぽくて「今回は外れかな?」と思ったが、それが済むと、男だらけの熱い義理人情と燃える集団戦になる。また、本作では美空ひばりが歌わない、というのもポイント高し(^_^;)
ラストバトルに向けて縁のある人たちが集結するところはめちゃ盛り上がる。
改めて、片岡千恵蔵が良いね。チャンバラも、他の人はどうみても竹光で、かちゃかちゃ横から当ててるだけなのだが、片岡千恵蔵だけ、重そうで、スピードも段違いなのだ。
終盤で市川右太衛門と対峙するところも、静かな演技ながら、どっしりとして見応え十分。
なお、本作では、オープニングクレジットが、エンドロールみたいに下から上にスクロールする、というかなり珍しいスタイルになっている。

1963年

楽園追放 BRボックス版

☆☆☆☆

レンタル版は観ていたが、このボックス版を買えば、面白さは数倍増しになる。
まあ、脚本こそ読まないと思うが(メイキング好きの私ですら読まないのだから、脚本まで読んでる人、どれくらいいるんだろう/誰が喜ぶんだろう)、特典映像の約30分のメイキングと、ブックレットを読むと、フルCGのオリジナル長編アニメを日本で作るのが、どれだけ大変というか、画期的なことかがよく分かる。ちなみに、『アルペジオ』とほぼ同時期らしいが、あちらも『サイボーグ009』も原作ありだし。
CG好きとしては、その制作の裏話も面白いが、普段は関心の薄い、声優メインキャストへのインタビューが、非常に興味深かった。特に人工知能たるフロンティア・セッターの演技の、感情表現のバランスの難しさを読んでから本編を観ると、正しく絶妙なバランス。逆に、改めてとても人間が喋っているとは思えないほど。
それ以外にも、物凄い情報量で、なおかつ文字サイズも、私なぞ老眼鏡どころかルーペがないと見えないキャプションも多い。どうやら劇場パンフレットに加筆修正したものを(たぶん50%くらいに?)縮小したものらしい。これ、二千円くらいのムックとして売っても全く不足のない内容。各種デザインワークから、メインスタッフのヒアリングまで載っている。
さらにサントラCDまで付属している。割と静かな曲が多いので、別にいらんかな、とも思っていたが、バトル曲とりわけアンジェラがディーヴァから新型アーハンを奪取して追手と戦うシーンの曲は、サントラを聴いてからみると、めちゃ燃える。エンディング(メイン)テーマソングも、何故か本編で流れる日本語版ではなく、英語版が収録されていたりするが、逆にこっちのほうが良かったりする(^^;)
テーマとしては、ブックレットに書いてあるように、単にどの立場の人が正しくて、他が間違い、という描き方はしていないので、見返す度に考える事がある、繰り返し鑑賞に耐える作品。
メイキングであるように、アンジェラの肉体の柔らかさは充分表現できていると思うが、せっかく髪が長いのに、針金みたいで、全然しなやかな芝居をしていないのが残念でしかたない。バトルシーンで板野一郎巨匠のアドバイスを求めたんだったら、垣野内成美にアンジェラの作画監督をしてもらったら、さぞ流麗な動きになったろうになぁ……(´Д`)
髪といえば、長いのは、後半に髪を切るシーンがあったが故、という裏話が分かったのも興味深かった。
なお、どこでも触れられていないが、アーハンが複数の標的をロックオンするシーンは、音楽と相まって、極めてゲーム『アヌビス ゾーン・オブ・エンダーズ』っぽいんだよなぁ。CGの人ならスタッフの誰かは絶対観てるだろうから、意識的か無意識かは分からないが、絶対にオマージュだよなぁ。

黄龍の村

☆☆☆★

低予算ながら勢いのある格闘シーンで有名な坂元監督作 作品。本作は新分野として、『犬鳴村』から始まる「村シリーズ」みたいなホラー?
冒頭の、ファウンド・フッテージ風のスマートフォンによるパリピー若者のキャンプ旅行映像には心が萎えかけたが、そこを耐えれば『カメラを止めるな!』ではないが、坂元監督らしいサービス精神あふれる話になる。
スマホ映像が縦長で、画面の真ん中三分の一以外は黒ベタだし、手ブレはあるし、色んな意味でキツいが、そこから普通の劇映画である第三者視点になると映画館のように両サイドの画面が広がってゆく演出はまあ、ある種の映画的な解放感がある。舞台として開放された平原とかじゃないので、カタルシス演出としては片手落ちなのが残念だが。
テイストとしては、『最強殺し屋伝説国岡』と『ベイビーわるきゅーれ』を文字通り、足して2で割った感じ。

以下ネタバレ

序盤は、まさしく「村シリーズ」や『ミッドサマー』のような、独自の因習のある村の論理に巻き込まれて惨劇に遭うノーテンキな若者、という正統派ホラー。
でも、序盤のスマホ映像とかでは控えめなのだが、「国岡」が映った時点で、「これは終盤には国岡が大暴れするんだろう」ということは、坂元監督ファンなら完全に先が読める、ネタバレになっているのが惜しい。
ところが、実際には国岡(本作では違う役名だが、ラストには『最強殺し屋伝説国岡』と同じく殺し屋専門になろうか、というねじれたリンクを匂わせるおファンサービスもある)だけでなく、10人くらいの若者グループの殆どがソフト(格闘)もハード(武器や防弾チョッキ)も準備万端の復讐者たちだった、というスケールアップ型の続編(作品でなく、監督のフィルムワークス的に)といえる。たぶん、国岡以外に過去の作品でメインキャストとして出ていた俳優はいないと思うが、女性ファイターたちは、ルックスも初登場から、一目で「予算が増えたな(^^;)」と分かる、可愛さというか、芸能人オーラが出ていた。
アクションも、伊沢沙織さんほど超絶ではないものの、充分に満腹できるレベル。
ラスボスであるゴリラみたいな(だってゴリラの鳴き声をSEで当ててるんだもん(^^;))男は、『宮本から君へ』の悪役だった人?

『南京事件』の総括

田中正明
☆☆☆☆☆
小学館文庫

『パール判事の日本無罪論』で右翼には有名な著者だが、既に占領中から、「南京大虐殺」に対する反証を集めていて、27年の独立直後に本書を出版している。筋金入りというか、真の右翼(保守/愛国者)とは、こういう人を言うのだ。
正しく南京攻略戦の前後に現場にいた人への取材も多数あり、しかも東京裁判で寝耳に水的に言われた大虐殺についても、わずか数年前の事なので、反証となる記憶も記録も確かなもの。
よく、「悪魔の証明」とされ、なかったことを証明するのは不可能だと言われるが、本書を読めば、数々の証拠によって、単なる戦闘以上のものはなかった事がはっきりするだろう。世界史的に、どの戦場でも起こったことしかなかったどころか、軍紀に厳しい日本軍のこと、ここでも世界戦争史上トップレベルの、民間人への配慮がなされている。
これまた、全日本人必読の書である。

デス・レース 2000

☆☆★

ロジャー・コーマンという、河崎実みたいな、Z級映画の元祖みたいな人の、伝説的怪作。ということで、楽しみに中古で買ったのだが……。いきなりオープニングがえんぴつイラストなので、大丈夫か!? と大いに不安になり、出てきた車が、『チキチキマシン猛レース』どころか、Pプロ、要するに河崎実電人ザボーガー』(Pプロのテレビ特撮をリメイクしたもの)レベルのショボさ(´Д`)
デザインもほうだが、なんと言っても小さいのがキツい。よく言えば、ポルシェ的なコンパクトなスポーツカーで、実際、そうなのかもしれないけど、予算がないあら、ゴーカートか軽自動車を改造したんじゃないの? としか思えない。50年くらいのアメリカには軽自動車はないだろうけど。
とうぜん、スピード感も早回しで表現していて、手前を一瞬でもで通り過ぎるようなメリハリはない。
主人公のフランケンは一般人が家にあるものだけでダース・ヴェイダーのコスプレをしたみたいで、ショボショボ。顔も、なんか地味過ぎて。
おまけにすぐに観客(作中の、ではなく映画を観ているわれわれ)に素顔を見せる。テレビ中継されているはずなのに、人を轢いたり、都合の良い時だけしか実況されない。ラジオ中継なの? とツッコミたくなるくらいだ。
『ロッキー』でブレイクする前のスタローンが出ているのは知っていたが、その他大勢のちょい役かと思いきや、堂々たる主人公を付け狙うライバル役。性格は陰湿だけど(^^;)
本作のキモは、悪趣味というかブラックジョークとして、レースでは人を轢いたら追加得点が入る、というルールにある。それを成立させるために、アメリカは北京に住む(という謎設定。ヘタすりゃ中共アメリカが承認する前だぜ?)アメリカ大統領が主催する、という設定にしている。
それに反抗するレジスタンスが、大勢派のフランケンや、大統領を狙って実力行使をする、など、リメイク版『デス・レース』よりも複雑な構成になっているのは意外だった。もっと河崎実的に一発ネタ的な、何の捻りもない物語かと思っていたので。
唯一、純粋に楽しかったのが、レースを実況しているいかにも八十年代的なロン毛のにいちゃん。観ているだけでこっちも陽気になる。ある意味、仕事でやってただけなのに、最後には轢かれちゃうのが残念。
そうそう、本作のキモである、レース中は人を殺しても罪にならないどころか勝因になる、という設定だが、わざとひかれにくる連中ばかりで、それ以外の観衆とかに突っ込む場面がなかったのは、残念というか、作中世界での一般人の位置付けが曖昧になっていると感じた。そのへんは『ガルパン』は抜かりなくやってるのがエライよなぁ。

ゴーストバスターズ

☆☆☆★

女性チームになったリメイク版。
てっきり20代30代の若い女性たちかと思ったら、40代50代(に見える)おばちゃん軍かい!? というメンツに、本気か? と思うのだが、テーマ曲とマシュマロマン以外忘れていた一作目も、メンバーはおじさんばかりだった?
主人公は、もしかして『ワンダーウーマン1984』のチーターの人かな?
コメディSFアクション、というのが本作の妥当な分類か。
CGによる幽霊も、最初の姫は綺麗だし、クライマックスにわんさか出てくるのも、暗闇に緑基調と美しく、ビジュアル的には全然悪くない。
退屈してきたら登場する珍発明とも言えなくもないアイテムも、コメディ映画としては良いタイミングで投入されるカンフル剤になっている。
誰もが聞きたいテーマ館だが、なかなかちゃんと流してくれない。中盤になってようやくメインメロディが流れるあたりは、『パシフィック・リム アップライジング』みたいだ(´Д`) 結局、フルで聴かせてくれるのは、エンディングになってから。なんか『GMK』みたいである。

トップガン マーヴェリック IMAX

☆☆☆☆★

最高の映画体験だった初見感想だが、不思議と「もう一度観たい」とは思わなかった。
近所の映画館にIMAXが導入されたということで、初体験として間違いない、という作品を選択。飛行機からの主観ショットの多様なも、アトラクション映画だしね。
画面が上下に広い、というのはオールドスクールからすると、全然意味分からん。昔のブラウン管サイズに戻ってるやん!? 映画との差別化のためにワイドスクリーンにしたんちゃうんかい?!
高解像度であることは、みんなが言ってた、俳優が戦闘機に乗っているからこその顔の歪みがようやく認識できたこと。もう一つは、初見で気になった、敵のスホーイの国籍マークが日の丸じゃないことがすぐ分かった事。これなら、日の丸に間違えないよね。
音響は、特に違いがわからなかったなぁ。爆音上映とかのほうが向いてるのかも。4DXは、そんなのなくても自然と身体が傾くから、いらんやろ(^^;)
オープニング、今回は落涙しなかったけど、その他は割と同じとろこで泣けたかな。作戦本場では、〇〇絡みのシーンは泣けた