思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『グリーン・ディスティニー』

☆☆☆☆★

久しぶりに再見。『ゴジラKOM』B Rでのチャン・ツィイーを観て、改めて観たくなった。
ストーリーは、400ページくらいの大部な武侠小説を忠実に映画化したかのよう(原作のあるなしは別にして)。ハリウッド的な起承転結ではないのも中国っぼくてよい。ラストは『北斗の拳』のユリアの身投げカットそのままだったなぁ……。
香港カンフー映画としても斬新だったのが、調子ロングショットでのワイヤーワーク。ヘタクソなアクションドラマや映画では、室内でさえ張り子運動がバラバラなのに、本作ではごく自然な放物線を表現できている。それたまけでなく、屋根から一カットでカバー歩きに移行するなど、ワイヤーワーク的にも新しい試みも成功している。
カンフー対決でも、引き、真上など、視点を次々に変えて、新鮮かつ飽きさせない。カンフースターではないチョウ・ユンファだが、実に優雅に剣技を演じている。監督コメンタリーで、力強さの少林寺系ではなく、優雅なウーダン(って何?(^^;))にした、という設定が興味深い。
脇役は個性的な面々ばかりだし、上記のチョウ・ユンファに、優雅なチャン・ツィイー、本格派のミシェル・ヨーという三者三様の描き分けも素晴らしい。
チャン・ツィイーファンには、食堂での乱闘シーン(香港カンフー映画ではお約束)が見せ場だが、正直、武術的な迫力という点では力強さが足りない(本気ではなく、あくまでも殺す気のないケンカ、という物語的演出意図を抜きにしても)。やはり、ミシェル・ヨーとの稽古場での対決が本作最大の見せ場かつ、カンフー映画史的にも特筆すべきもの。
セリフをほとんど交えずに、次々に武器を取り替えて行くテンポ。ミシェルの、全く危うげのない技に対し、(設定上で強力な剣を使っていることはともかく)スピードと美しい型(ウーピン師匠の匠の技か)で翻弄するチャン・ツィイー。何度観ても飽きない。
監督コメンタリーによれば、ミシェルが縄のようなものを使う構想もあったらしいが、どうやらウーピン師匠に却下されたらしい。『阿羅漢』や『ロミオ・マスト・ダイ』でも使っているので、カンフー映画的には当然あり得るのだが、剣と戦うには、縄を切られて終わり、となるから状況的な相性が悪かったということか。
メイキングでは、ウーピン師匠とチャン・ツィイーのインタビューも是非とも入れて欲しかったところ。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』B R

☆☆☆★

改めて観ると、怪獣とそのバトルの迫力は色あせないが、ドラマパートの貧弱さは二度観るには厳しい。
ただ、コメンタリーを聞く限り、製作者サイドは毛頭層は思っていないようだ。S Eを含め、細かいオマージュ的なあることは分かったが。
特典ディスクでは、監督、製作者は当然として、キャストインタビューが酷い(^^;) テロリスト母娘はいいとして、あとは軍人役の脇役ばかり。父親役も、ケンワタナベもチャン・ツィイーもインタビューがないのだ。
いや、怪獣が主役だと言うなら、イメージボードやデザインの変遷もいちおうは載っているが、やっぱり実物大プロップ(モスラ幼虫と、ケンワタナベが触ったゴジラの両鼻のはあるらしい)とか、着ぐるみの造形途中写真や動画がないと怪獣映画としての醍醐味、魂がない感じがするなあ……。

『ペット』

☆☆☆★
さすがはハリウッドだけあって、レンダリングの精緻さはもちろん、動きじたいの気持ちよさも言うことなし。特に動物ものなので、思想的にどう、ということもなく、無心で楽しめる。
ただ、ストーリーそのものは、飼い主のいない間に、ペットたちかが大冒険する、と云う『ファンタジア』の『くるみ割り人形』から続く、王道の展開。
まあ、童心に返って、前後関係(ストーリー)とか気にせず、その場その場のアクションを楽しめば充分ではないだろうか。

『マジンガーZ インフィニティ』

☆☆☆★

作中で奇しくも敵が言っているように、『マジンガーZ』は、もっと(岡田斗司夫的に言えば)バカな作品だったのに、小賢しいSFや政治的な設定を持ち込んだ為に、ドライブ感が削がれ、厨二病的な、恥ずかしい作品になっている。『マジンガーZ』は本来、バカな話なんだから、徹底して理屈抜きで勢いだけで突っ走る作品にすべきだった。
いちおう、後日談らしいことは分かるが、設定もよくかわらないし、就中、敵が何故、どうやって復活したのかも全く分からない。
唯一、手放しで楽しめたところは、クライマックス前の、ボスボロット登場から、マジンガーあしゅら男爵に勝つところまで。ここは問題無用で勢いと作画クオリティも高い、充分、五億点出ていると思う。

『アルペジオ(7)』

タカオVS潜水艦2501。
SFらしくド派手なバトルだが、後出し的な超兵器と新設定ばかり。これを盛り上がりととれるかどうかが分かれ目になりそう。
私的には、この中間というか、完全にはノリきれない感じ。

『物体X』

山田正紀
☆☆☆★
早川文庫J A

50、60、70年代の映画や小説をモチーフにした中編。


『物体X』☆☆☆☆
これはタイトルから分かりやすい。『遊星からの物体X』が元ネタだ。基本的には外見からは区別できない生物だが、本体は本作では、『ジョジョ』のエシディシを思わせる、脳が本体となっている。北方領土を舞台に、冷戦期ならではの設定だが、21世紀の現代でも通用する筋立てになっている。

『暗い大陸 あるいは“ピーターと狼”−−異常者のための音楽物語』☆☆
SF作家Yとその子孫が出てくる、メタ的というか、ナンセンスもの。時代は逆行するが、『ザ・セル』とか『ミクロの決死園』を合わせたようなプロット。ナンセンスという点では、筒井康隆山田風太郎の作風に近い。


『見えない人間』☆☆☆
近未来、全日本人が生態活動をモニターされ、そのために保険料が給料の6割に達する社会。最近読んだ『電気クジラ……』か小林泰三だか何かにもあったが、これまた現代でも何ら遜色ない設定だ。もしかしたら、『未来世紀ブラジル』とか『ブレードランナー』が元ネタかもしれないが、執筆が85年だか、どっちか先か……?

『レクリエイターズ(6)』

☆☆☆☆

主人公が、全ての元凶が自分であることを告白し、いよいよここから逆襲だ、といつところで完結。掲載誌での状況を全く知らなかったので、戸惑うばかり。 こういう時は、せめて単行本にはあとがきで事情を説明すべきだろう。
絵柄的には『デスノート』の小畑健の影響、それこそパクリ的な、そっくりな表現が多かったり、タイトルページのように人物のアップでは、まだ絵の不安定さが垣間見えたり……。
ただ、このまま進めても、原作たるアニメのラストは悪評もあるみたいで、むしろ打ち切りの理由はそっちサイドなのかも……。少なくとも、この漫画には、そんな酷い要素はないから。
ただ、メインたる、主人公の初恋の人(?)たる創作者が自殺した理由の描写が弱いのが真面目なところ、難点かも。もしかすると、打ち切りが決まっていたから、一話内で駆け足説明にせざるを得なかったのかもしれないが……。