思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『物体X』

山田正紀
☆☆☆★
早川文庫J A

50、60、70年代の映画や小説をモチーフにした中編。


『物体X』☆☆☆☆
これはタイトルから分かりやすい。『遊星からの物体X』が元ネタだ。基本的には外見からは区別できない生物だが、本体は本作では、『ジョジョ』のエシディシを思わせる、脳が本体となっている。北方領土を舞台に、冷戦期ならではの設定だが、21世紀の現代でも通用する筋立てになっている。

『暗い大陸 あるいは“ピーターと狼”−−異常者のための音楽物語』☆☆
SF作家Yとその子孫が出てくる、メタ的というか、ナンセンスもの。時代は逆行するが、『ザ・セル』とか『ミクロの決死園』を合わせたようなプロット。ナンセンスという点では、筒井康隆山田風太郎の作風に近い。


『見えない人間』☆☆☆
近未来、全日本人が生態活動をモニターされ、そのために保険料が給料の6割に達する社会。最近読んだ『電気クジラ……』か小林泰三だか何かにもあったが、これまた現代でも何ら遜色ない設定だ。もしかしたら、『未来世紀ブラジル』とか『ブレードランナー』が元ネタかもしれないが、執筆が85年だか、どっちか先か……?