思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ゲーマーズ ハイ!』
☆☆☆
双葉社

雑種の増刊号ということだが、次は出たのだろうか?15年発行の本を図書館で借りたのだが、書店で見かけた記憶がないけど……(^_^;)
内容は前に読んだファミコンゲーム本1巻と2巻を合わせたような感じ。
凄いのは、50ページを費やしてファミコンソフトを完全カタログ化していること。さすがに内容紹介しているものは半分以下だが、それにしても凄い。まあ、凄いのは協力したコレクター「酒缶」氏なのかもしれないけど。
ちなみに、ファミコンだけでなく、セガもハード一覧と一部のソフトの紹介が載っている。
一部のソフト紹介は、ファミコンも含め、文量が少なすぎる。記事としての面白さは物足りないが、ファミコンの資料(総覧として、深く調べるためのとっかかり)としてはこれさえあれば充分では?

『老眼のウソ 人生をソンしないために』平松類
☆☆☆★
時事通信社

「見にくいのを放置しておくと認知症になりやすい」

「メガネの度数を合わせるのは「お昼前後」がベスト」

「老眼の(略)目薬(略)箱の後ろの成分表にシアノコバラミンと書いてある(略)これがピント調節に作用する」

『殺意の構図 探偵の依頼人』深木章子
☆☆☆★
光文社

『鬼畜の家』よろしく、弁護士の元に、弁護の依頼が来るところから始まる。友人の紹介で、実父の放火殺人の疑いで逮捕された男の弁護をすることになった弁護士だが、被告の主張には明らかにおかしいところが……。
公判中に新事実が発覚し、アリバイが成立したことで無罪となる。
ところが、被告の妻が公判中に別荘で死亡したことに続き、被告も釈放後に死亡する。
結果的には、過去の人間関係という昔話が多いことによる時間の経過もあって、エピローグの時点で、登場人物表にある13人中、6人しか生きていないという大量殺戮っぷり。
中盤からは、視点人物を変えて事件を振り替えるという構成で、『白光』か『プリズム』的なある種の多重解決ものと思ったが、最後にはちゃんと1つの真相に帰着する。
ただし、本格としては、ある程度常識の範囲内かもしれないとは言え、ある種の専門知識が決め手になること、後だし的な事実が出てくるので、本格としての投げられ感は減点された。
三作めを読み終えたが、この作者、古き良き、一族の相続をめぐる連続殺人ものを、自身の経験を活かした弁護士ものとして再構成したいのだろう。だからこそ、異常に人間関係の愛憎劇のパートが多いのだ。

以下、ネタバレ

真犯人像や、シリーズ探偵の意外な過去のエピソードはなかなかニヤリとさせられる仕掛けだった。
まあ、一人の真犯人というより、複数の思惑が交錯し、誤解がかばい合いを生む、というのが本作の醍醐味であり、(好き嫌いの分かれそうな)ややこしいところ。私的には、小説としても嫌いではない。最初に挙げた貫井ちゃんテイストもあるかな。

さよなら銀河鉄道999
☆☆★

考えてみたら、こちらは今まで観たことなかったようだ。
虚心坦懐に言えば、「全然ダメダメやん」って感じ。中学生が考えたストーリーか?というくらい見せ場らしきものを、理由なく詰め込んだだけ。脚本の授業で受講生が提出したら、赤点をくらうレベルでは?
冒頭の、鉄郎が999に乗り込むまで。哲郎はともかく、メンバーにとっては誰かも知らない女からの、命令口調の伝言に、ひき止めないでだけでなく、文字通り命懸けで同道するゲリラメンバーからしておかしい。単に仲間の死体を乗り越えて旅立つ、感動的なシーンにしたくて入れただけでは?
富野監督の絵コンテ論を読んだので、999の進行方向が右から左なのが気になった。ただ、ラストシーンでは左から右になるので、メーテルと別れることこそが本当の旅立ち、成長ということか。
ハーロックやエメラルダスが唐突に出てくるのも中2病的。
メーテルの言動は、美貌を武器に男を手玉に取り続ける結婚詐欺師そのもの。映画だから時間的な省略があるが、リアルに考えたら、目の前に座って何日も鉄道に乗っているのに、何も訊かないなんて、それこそ詐欺師に騙される童貞男そのものだ(まあ、間違ってはいないのだが、劇中で「男おとこ」言ってる割には、童貞のっていうのが何だかなぁ……)。
鉄郎の射撃がほぼ百発百中で、敵の銃はほとんど当たらない、というのもマンガ映画的な御都合主義。機械人間の兵士は『スターウォーズ EP1』のドロイド兵士みたいなヘッポコって演出意図なのか?
ファウストが鉄郎の父親なのはすぐ気づくとしても、ファウストの意図は分からん。息子が結婚詐欺師に騙されようとしていたら止めるやろ? そうではなく、主たるプロメシュームが正しいと思っているなら、説得するか、力強くで止める(殺す)のが筋。最後に鉄郎と対決するのも、「子は、父親を乗り越えるもの」というメッセージを言いたいがために、逆算的に無理矢理入れたとしか思えない。
これに限らず、本作には、視聴者が読み取るべき、またはナレーションで語るようなテーマを、登場人物が喋る局面が多すぎる。ハーロックやエメラルダスの全セリフがそうだし、ラストのメーテルのセリフもそうだ。鉄郎が大人になった後に懐古的に語るならともかく。「お前が言うな」とはこのことだ。
そもそもメーテルが鉄郎を誘ったのは何のため?
プロメシュームを倒すだけなら、自分一人でできたやん!?自分一人では、踏ん切りがつかないから、恋人を連れてきて後押ししてもらった?
で、鉄郎以前にも何人もの少年と旅して来ただと? メーテルってショタコンかつ一人と連れ添うことの出来ない、だめんずうぉーかーやん( ´Д`)
あーあ。気がつかなきゃ良かったよ、わたしゃ(^_^;)
エンディング歌は『84ゴジラ』と同系統。外人に日本製の歌を唄わせる、っていうのは80年代の流行だったのかねぇ?

『シグナル』
☆☆☆★

事前情報なしで観た。主人公が直面するのも奇妙な出来事だが、視聴者も、いったいどんな映画なのか、実に奇妙な体験。
ネットで監視されているのに気付き、犯人を突き止めようと、アドレスを辿ると……。
映像はスローを多用したり、シャープで割りと凝っている。『パッセンジャー』みたいな、ビジュアルに金を注力して、出演料は節約した低予算映画?何しろ顔のばっちり写る登場人物は4、5人なのだ、
基本的に主人公視点で話が進んで行くため、脚本の構成も何もないのだが、もうちょっと彼女との関係のけりのつけかたなど、改善の余地はあっただろう。

以下、ネタバレ。

脚本として問題なのが、彼女の扱い。恐らく彼女にも何らかの肉体的な変化が起こっているのに、それが描かれない。『Gガンダム』のアレンビーみたいに、背中の丸いボタンみたいなので象徴しているのか?それとも服で見えない胴体?それなら、ガールフレンドという設定なんだから、ベッドシーン(に入ろうとしたらそれに気がつく)を入れたら良かったのに。ラストシーンに彼女がいないのも片手落ち。
腕や足が変形した造形は、日本のマンガやアニメみたいではあった。それも良し悪しだけど。

さらにネタバレ

本作は、要するに『ダークシティ』や、数多の作り物世界ものの類に属するもの。中盤から、研究所で隔離された主人公が宇宙人に感染しているのではなく、監視しているほうが人間ではなくロボットで、主人公がいた世界が宇宙船だった、というオチなのだ。
ただしこのオチ、ちと分かりにくい。監視員ローレンス・フィッシュバーンは、主人公たちと同じ症状が頭に出ているのかと一瞬錯覚するし、そもそもこの宇宙船が『宇宙の孤児』的な移民船で、ローレンスがその管理ロボットなのか、主人公は宇宙人の研究対象として親の代から捉えられているのかも不明。
研究所員や警備部隊がヌルヌルなのはロボットだからと、研究対象をなるべく傷つけないためだったのかと分かるが、初見時は、映画的な御都合主義にしか見えないなぁ……。ある意味では伏線的な演出なのだが。
研究所で、親友と換気口ごしに話すあたりで、すべて幻覚で『マトリックス』的はたまた『宇宙人王さんとの対話』的な展開になるのかと思ったのだが……(^_^;)
こんなオチだと分かってみれば、『サイン』の亜流であることはタイトルから明示されていたと言えるかも。『リング』と『ループ』みたいに。

帝都大戦』
☆☆★

描いていたイメージ通りの内容。内容がないところも想像通り(^_^;)
80年代らしいと思ったのが、少女の身体がダンゴムシになったりというグロ描写。
こういうトンデモ伝奇ものは、読者を煙に巻くくらいの情報量が叩き込める、小説じゃないと厳しいかな……。映像でそれをやるには、『マッドマックス 怒りのデスロード』くらいの畳み掛けが必要かも。

『衣更月(きさらぎ)家の一族』深木章子
☆☆☆★
原書房

ネタバレなしで書くのが非常に難しい作品。どんでん返し、という意味では最終章に入るとそこそこのものが炸裂するが、その後の、動機だの、証拠だのがダラダラ続く感じで、キレが悪い。そのへんはエピローグにまとめて、真相を明かしたところでスパッと終えたら良かったのに。

以下、そこそこのネタバレ。


タイトルでネタバレしてるんじゃないか、という気もするが……。
目次を見ると、3つの殺人事件がならんでいて、せっかく人間関係を掴んだと思ったら次の事件に移るので、ちょっと頭を使う。登場人物一覧が欲しい……と思ったら、最終章に出てくる。その解決編に入ってもややこしい。ここまでややこしい系図は。黄金時代の海外ミステリでもなかなかないだろう。