せかいのおきく
☆☆★
黒木華主演ということくらいだったかな……録画した動機は。
まず、最近の映画なのにモノクロ、というのに驚いた。しかも、テーマが江戸の肥売り。主人公の池松亮介の職業だ。彼をアニキとして同業に加わる、男二人と、黒木華のドリカム編成。弟分のほうが黒木に懸想し、池松のほうは、糞尿処理業者としての、お仕事ものとしての物語がメイン。
こういう話なので、肥溜めとか肥組み、さらには糞尿を投げたり投げられたりと、『ビジュアルバはム』みたいな感じ。ひとつ前に『逆転のトライアングル』を見たので、期せずして糞尿映画を連続して見たことになる(^^;)
白黒にしたのは、カラーにすると、肥溜めシーンがグロすぎるからなのかな(^^;)
ただ、本作は六章だて構成になっているが、各章の終わりの1カットだけカラーになる。それも、特にテーマ的な意味が感じられなかったんだけど。
大雨で肥溜めが溢れ出して、長屋じゅうがくそまみれになるあたりも、当時のあるあるなのかな……と思わされる。歴史好きとしては、これまでの本や小説、映画でも知らなかった一面で、面白い。いや、ホントはそのへんはある程度対策が取られてたのかもしれないが(何せ200年も続けているエコシステムなんだから)、いかにもありそうな「映画的ウソ」ともいえる。
江戸の通りや、船着場も、太秦映画村だなぁ、という知ってる場所ばかりだが、肥桶をかついだり、それを舟に移している、という見せ方が新鮮。
ラストに向けても、ある意味では肥売りという、江戸の最下層の職業人を主役にしているからこその、カタルシスがあるかと思ったら、(ヨーロッパ映画的というか、ソフトストーリー的というか)普通に終わったのが、惜しい。
あと、6章くらいに区切られているが、その必要があったのかも疑問。原作があって、それに準じたのなら仕方ないが。
以下ネタバレ
中盤で、クセの強すぎる佐藤浩一が幕末のゴタゴタで殺され、ヒロインも巻き添えなのか、クビを切られる。傷口から息が漏れる音がリアルで怖い。
死んだと思ったが、唖としてヒロインの座を続ける。時代劇なんだから、「啞」というセリフを言わせればいいのに、出てこない。本作は、これだけ本格時代劇的な設定なのに、セリフが現代劇と変わらないのが問題かな。
それをおくと、喋れないおきくが、習字の父の信条を書き写そうとして、描き間違えて「ボキャブラ天国」ばりに(声に出せずに)笑い転げるところは面白かった。本作で数少ない、明るいシーンだ。