思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

正欲

☆☆★

予告編からは、特殊性癖博覧会みたいな作品だと予想していたのに、全然違った。露骨に、『渇水』と『流浪の月』を合わせたような作品だった。
「普通の人」とは違う性癖を持った人が色々登場して、その鬱屈を描く。
というと、ひたすら暗いようだが、映画的なご都合主義ゆえ、六七人くらいの人物紹介が終わると、割と簡単に、その歪さを埋める片割れが登場して、順番に片付いて行く。
色んな性癖と書いたが、大部分は水フェチ。いや、作中の検事たちのセリフじゃないけど、そんなマイナー(そうな)性癖の人がそうそういて、しかも現実に出会うか?? 近年ではSNSがあるから、ある程度は容易になったけど。ダンスが得意な男が、何の障害なのかよく分からなかったが、水フェチ三人衆の一人だった?? 男の顔の区別がつかなくて困った(@_@)
主人公たちが滝を見に行くところなんて、構造上の位置も物語的な役割も、まんま『渇水』と同じだからねえ(´Д`)
登場人物たちの演技(役回り)は素晴らしいけど、作中で描かれている内容、というか純粋な映画としては好きになれなかった。
もちろん、群像劇として、複数いる登場人物のうち、契機はあるが、立場や意識が好転した人ばかりではない人も何人かいる、というところのバランス感覚は尊重するが。
稲垣吾郎は、『十三人の侍』に続く「悪役」として評価する人も多そうだが、彼はこういうスカした天然系のキャラしか演じられないだけなんじゃない? 実際、本作でも人情的な芝居には危うさ(下手さ)を禁じ得なかった。
メインの若手の頑張りは改めて言うまでもないが、私的に注目させられたのが、男性恐怖症の女子大生。本作がデビュー作らしいが、舞台劇出身かなぁ……(何も調べる前の推測)。猫背で、ぬぼーっと立ってる役作りもそれらしかった。

以下ネタバレ

水フェチどうしで、噴水のある公園でオフ会をやったら、そこにいた子供と一緒に遊ぶことに。オフ会に集まった3人のうち、1人がペドフィリアでもあり(そんな「異常」性癖を2つも併せ持つこと、あるかなぁ)、彼が捕まったことで、オフ会に出ていた主人公にも嫌疑がかかる。主人公の「妻」と吾郎ちゃんの問答が、露骨に本作のテーマを示している。
もうひとつは、中盤の、主人公たちが初めて夜を共にする(セックスするわけでない)時に、これまた非現実的に、テーマ性を語り出すのも冷めた。
また、性欲がないことを示すために、二人がセックスのやり方を探るシーンは、セックスの滑稽さをも同時に示す、うまいシチュエーションではあるが、どうせならちゃんと裸になって、Cの直前までやって欲しかったなぁ……。人気俳優で、レーティングの問題もあるからら無理なのは分かるけど……。