思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『地獄門』☆☆☆★

羅生門』みたいな話かと思ったが、そうでもないような、微妙にあるような話だった。『源平盛衰記』をベースにした菊池寛の短編を元にした、大映初のカラー映画らしい。しかも海外で衣装部門を受賞したそう。
一見すると単に色が褪せただけに思えたが、これが当時からの色彩だとすると、淡いトーンで全体が統一されている。改めてそういう視点で見れば、『乱』または『英雄』のようなカラフルさではなく、渋いというか、繊細な色彩設計でできていると感じる。特にヒロインがラストシークエンスで着ている十二単の美しさは必見。
お話そのものは、実に単純で、50ページ以下で収まる短編小説だろうなあ、という感じ。逆に、よく2時間近く引っ張れたもんだ(^_^;)
音楽も、和風というか、雅楽的な曲がわりとメリハリなく鳴っている感じで、それほどでもなかった。

以下ネタバレ

物語は、同軍の妻を略奪しようとして、母親を人質にしてまで暗殺の手引きをさせようとしたら、夫の布団にその妻が命を捨てて身代わりに寝ていたため、それを殺してしまった、というだけのもの。これ、致命的な映像的問題がある。当時はリアル志向ではないので、夜でも満月の時以上に明るく、それは室内でも同様。鎌倉時代当時のリアルな室内なら、蝋燭を消せば当然真っ暗なので、間違えて刺してしまうのも当然、というところ。なのに、先述のように明るいので、それで男か女かもわからないなんて、間抜けすぎだろ、と思わざるを得ないのだ。

1953年 日本