小野美由紀
☆☆☆☆
早川書房
読むまでは、てっきり小野不由美がSFを書いたのかとおもったが、別人だった。小野みゆきとも違うので、ややこしい(@_@)
ひとことで言うと、百合ものと言って過言ではない、ジェンダーSFが多い。表題作を始め、『魚舟・獣舟』に非常に似た構造である。
『ピュア』☆☆☆☆
セックスを終えたら女が男を食べる、という設定じたいは昆虫にもあることは広く知られており、それを人間に転用する発想じたいはそれほど斬新でもない。ただし、ジェンダーSFとして、現在の延長としての未来である説明ゆえの関係性、男女問題など、小説としてうまくまとまっている。普通に、女が男女平等として、出産、育児、戦争までやることになったら、大変なのは女のほう、というのはなるほどと思わされる。
『バースデー』☆☆☆☆
蛹を経るように、完全に男女が変えられる近未来という設定だが、現在の性転換した女友達を巡る話としても成立する、ジェンダー小説としても普通によくできている。
『to the moon』☆☆☆☆
『かぐや姫』をSF的に解釈する、というのはありがちではあるが、これまたジェンダー寄りのSFとして、思春期の懐古もの純文学としても及第点の佳作。
『幻胎』☆☆☆☆
『ジュラシック・パーク』が元ネタかどうかは分からないが、現生人類の前に存在していた異人類の精子が発見され、それを事故で子宮を失った女性科学者が提供した卵子で受精させて研究する。人工受精をテーマにした、これまた女性ならではの文学的心情描写と、SF的オチの佳作。
『エイジ』☆☆☆
『ピュア』のカレシだった男を描く、前日譚でもあり、世界観を掘り下げる側面もある短編だが、面白さはそれほどでもない。『ピュア』の次に配置するほうが良かったんしゃないかなぁ?