思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『さよならの朝に約束の花を飾ろう』

☆☆☆★

凡庸な異世界ファンタジーものかと思って、川井憲次音楽担当作品だが、劇場ではスルーしていた。
絵は綺麗だが、そこまで繊細でもなく、頑張っているテレビアニメくらい。
冒頭の機織り種族の城は、設定じたいに粗密がない事の問題なのか、パースの問題なのか、人が大きさが全く分からない。
主人公が逃亡し、乳児を拾うところから、本筋が明らかになる。本作は子育てアニメだったのだ。だが、居合わせた男が忠告するように、女の子(不老長寿の一族なので、年齢的にはおばさんかばあさんの可能性もあるが、精神年齢は子供だ)が一人で子育てするのは、無謀。家庭生活のある場合でもそうなのだから、何もかも失った身では、もう不可能と言っていい。たまたま親切な母子家庭農家に盗みに入ったから良いものの……。
ここから、要するに、思春期の反抗期から、親離れ、子離れまでを描くのだが、ファンタジー的な特異な物語も進める必要があるせいで、純粋に親子ものとしてはラストに回想して泣かせるほどの描写は多くない。細田守『おおかみこども』くらい、それだけを淡々と描くならともかく。
そもそも、死なない女と、歴代男の物語って、どこかで観たアニメの設定だし、SFとしてはそこまで斬新でもない。いや、すぐにタイトルが出てこないけど……(^^;) まあ、『ファイブスター』とかもその一例かな。
川井さんの音楽は、もうひとつ乗れなかった私からすると、作品を十二分に彩るものだった。
良かった点と言えば、機織り種族ということで、布にメッセージを入れる、という設定。たしかに、手間は異常にかかるが、二次元コード以外の何者でもない媒体だかもんね。