思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『ん』

『ん 日本語最後の謎に挑む』山口ようじ
☆☆☆★
新潮新書

「上古の日本人は、帰化人に直接漢字の発案を習っていた。(略)日本人の耳にこの2つの音を正確に聞き分ける力と、書き分ける必要性があったのかどうかは分からない。しかし、帰化人の耳はそれをイヤでも聞き分けた。発音しているとおりに書こうとすれば当然これは書き分けねばならないと彼は思ったに違いない。」
上代の日本人(略)書けないから、無理をしてでも書かなければならないときには「イ」とか「ニ」という現代のカタカナを記号として使った。」
「文献の上で「ン」という文字が使われた最古の例は、現在のところ康平元(1058)年に書かれた『法華経』(略)だと言われている。」
「撥ねる音、つまり「ん」は、表しないのが和歌を書くときの原則である」
「ん」は書いても書かなくても構わない。むしろ、書かずにおいて、読む人の判断で「ん」を入れて読むというのが、平安時代からの伝統的な表記法だったのである。」