思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『シェルブリット(2)』
☆☆☆☆

二巻になると、まさしく正統派ミリタリーSFという雰囲気である。戦争SFとしての描写は、特に訓練なんかが小説(富野)版『ガンダム』っぽい。意外とキャラの死亡率が高いのも同様。
特にSFっぽさを感じさせるのは、シェルブリットの装甲が自在に可変するところ。このへんは少しナノテクスリラーものに通じるかも。こういう高速で起きる現象は、マンガやアニメでは苦手な表現なので、永野氏が『ファイブスター』でやりたかったことなのだろうなぁ…と思わせる。
また、ハードSFとまでは言えないが、燃料や速度の問題をきっちり描いているのが宇宙SFとしてのリアリティを増している。
後半に、それまでの伏線なしで唐突に異星人とのコンタクトが船(ジーンライナー)の目的であることが出てくる。おまけにその前に話は終わってしまう。大局的には何の変化もないのに、主人公の一区切りの成長で終わるのは、『エンダーのゲーム』なんかと同じ。それとも、まだまだ続く予定だったが、誰かの事情(どちらか、あるいは両方が別の仕事で忙しくなった、クリエーター同士の意見の衝突、あるいはギャラに対して売れ行きが悪かった等)でペンディングになったか…?その一例として、巻頭設定には「謎の男」が出ているのに、本編には出てこないとかの歪さが現れている。
逆に、鏃形のシルエットが特徴のシェルスレーブの形状については本文では一切描写されていないなど、ちぐはぐさが目立つのだ。
ちなみにシェルスレーブは、頭部のような鏃(シルエットは「やじり」というより「やじろべえ」?)はともかく、それ以外の部分は、永野メカらしからぬ、どこかで見たようなデザイン。これのみならず、シャトルや軌道ステーションなど、どうにも独創性、完成度ともに低い。逆に、アニメ化を見越した線減らしの結果のデザインなのかと思わせる一端だ。線の多少とデザインの完成度は比例しないことは承知しているが…。
もしアニメ化されてたら、『ガンダムUC』的なブームになったような気がするだけに惜しい。
なお、帯に「物語はここまで進化した」とあるが、その宣伝のためのアオリに過ぎないとしても、物語じたいは凡庸である。むしろ「小説本」としての独創性こそ強調すべきであろう。(コミカライズではない)小説本としては過剰なビジュアルと文字設定、巻末の脚註という名の用語辞典などがそれだ。とはいえ、小説としては、本文内で違和感なくそれらの情報を盛り込めないのは、小説家としての力量不足を疑わざるをえないし、編集レベルでも、本文レイアウト的に、下二割りが空欄なんだから、そこに脚註として入れるべきだったろう。既存の用語は後で読んでも良いが、独自の設定についてはこの問題が大きい。中でも先に挙げた本作の物語の核心とも言える異星人について用語辞典でしか書かれていないのが最大の問題。


『シェルブリット(2)』
☆☆☆☆

正統派ミリタリーSF。戦争SFとしての訓練は小説版『ガンダム』っぽいか。
SFっぽいのは、シェルブリットの装甲が自在に可変するところ。このへんは少しナノテクスリラーものに通じるかも。
後半に、伏線なしに異星人とのコンタクトが船(ジーンライナー)の目的であることが出てくる。おもけにその前に話は終わってしまう。主人公の一区切りの成長で終わるのは、『エンダーのゲーム』なんかと同じ。それとも、まだまだ続く予定だったが、誰かの事情でペンディングになったか?巻頭設定には「謎の男」が出ているのに、本編には出てこないのだ。
逆に、鏃形のシルエットが特徴のシェルスレーブの形状には本文では一切描写されていないなど、ちぐはぐさが目立つようになる。
アニメ化されてたら、『ガンダムUC』的なブームになった気がするだけに惜しい。

シェルブリット (2)シェルブリット (2)
幾原 邦彦 永野 護

角川書店 2000-07