思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

第3のビールは、なぜビールの味がするのか? 新ジャンルの味覚を作る技術』夏目幸明
☆☆☆☆
技術評論社

副題の通りの内容。
そもそもビールはどうやって作るのか?海外とはどう事情が違うのか?発泡酒誕生の経緯とは?第3のビールと新ジャンル、さらにはノンアルコールビールとは?そしてその裏側の技術とは?
何気なく飲んでいるビールの実態が分かる、興味深い内容。特に次々にやってくる税制改革との戦いなど、『プロジェクトX』でやってもいいくらいだ。

「たとえばサッポロが「責任品質」をうたっているが、これも単なるイメージ戦略ではない。同社は毎年、社員を産地に派遣し、生産者とともに品質の選定、栽培方法を話し合って、生育状況を見守りながら収穫時期を相談し、収穫された大麦やホップのなかから、良いものを厳選していく、ということまでやっている。」

「ワインはブドウジュースに比べ、甘くないはずだ。これは単純な話、ブドウジュースのなかの糖がアルコールに変わったからだ。」

ブドウ糖は最初にブドウから発見されたから「ブドウ糖」」

「一般的に、上面発酵酵母は華やかな甘い香りを醸し出し、下面発酵酵母は爽快でスッキリした味に仕上がるという特徴があって、現在は下面発酵のビールが主流だ。
上面発酵の代表的なビールは「エール」「トラピスト」「ポーター」など。エールビールなど、発酵の温度が下面発酵に比べて高い為、赤ワインなどと同じく常温に近い温度で飲むのが最適といわれている。下面発酵のビールは「ラガー」「ピルスナー」なと。そう、ようするに日本ではこの「下面発酵」のビールが主流になっている。」

「「スーパードライ」最大の特徴は、米、コーン、スターチなど「副原料」を多めに使ったビールが「うまい」ことを世に知らしめたことだろう。」

「日本の税収の約3%が酒税(略)その約70%がビール・発泡酒のもの。(略)日本のビールの税率はアメリカの約11倍、ドイツの約16倍という高額なものになっている。ビールは税がなければジュースと同程度の価格なのだ。」

「小さなメーカーが乱立してしまうと税の徴収が難しくなるということで、ある程度の生産量が確保できない限り、ビールは事実上造れない、という制度になっていたのだ。
ちなみに1994年に「地ビール解禁」といわれたのはこの「最低生産量」の引き下げを指す。ビールを醸造するための免許取得に必要な年間最低生産量が、2000キロリットル(略)から60キロリットル(略)になったため、小規模のビール醸造が可能になったのだ。」

「大蔵省は突然、一方的に、麦芽の比率が50%以上の発泡酒(略)の税率をビールと同じにしてしまう。そして、麦芽の使用比率が25%未満の発泡酒(略)についても、83.3円が105円に引き上げられた(略)06年5月に、再び酒税法が改定され、いわゆる「第3のビール」と呼ばれていた分野が増税されることになった。」

「メーカーサイドはこれを「ビール」に類するものではないと考えていて、たいてい「新ジャンル」の名で呼んでいるのだ。それはそうだろう。麦芽をまったく使っていないお酒に「ビール」の名はふさわしくない。」