思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

『アンタレスの夜明け』
☆☆☆★

やっぱり80年代SFはいいね!
本作の内容を紹介するには、ズバリ、『彷徨える艦隊』である。部下たちの操縦方法などのディテールこそないが、その他の設定は驚くほどそっくり。本作をリメイクしたのが『彷徨える艦隊』だ、と言っても否定できる人はいないだろう。ジャンプ点がフォールド・ポイントと名づけられて、独自の理論が設定されているところなど、本家できるこちらのほうがわかりやすいところもある。
欠点としては、『彷徨える艦隊』4巻ぶんくらいのイベントが詰まっているぶん、人物描写の不足で、メインキャラ以外の区別がつきづらいこと。
明らかに本作独自の展開として、超新星放射線の影響が宇宙から近傍の惑星まで、広範に描かれているところ。序盤、中盤、ラストで大きなインパクトを持つ展開を引き起こしている。
戦争SFとしては、クライマックス後の下記の文章が、人はなぜ戦争をするかを端的に表していて興味深い。著者には軍歴があるのかな?と思わせる。解説によればないようだが。
「リチャード・ドレイクははじめて、自分の種族を惹きつける戦いの魅力というものが本当に理解できたように思った。ディスカバリー号がライアルの侵入軍と撃ち合ったこの何十秒かは、彼の生涯でももっとも恐怖に満ちた――そしてもっとも興奮した――ひとときだったのだ。
彼の血管を駆け抜けたアドレナリンは、感覚を鋭敏にし、時間の経過をおそく感じさせた。(略)だがその恐怖感は、彼と船と部下たちが戦いを生き延びたことに気づくと、訪れるのと同じ早さで至福の思いに変わった。(略)“人生最高の楽しみとは撃たれながら当たらないことだ!」