思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

人狼城の恐怖(2)フランス編』二階堂黎人
☆☆☆★
講談社文庫
フランスにある「青の狼城」で起こる連続(密室?)殺人事件を描く。
こちらではエストラル体なるナチスの研究で生まれた「人狼」が、死体に乗り移って連続殺人を行う様子が“書かれる”。
設定としては解説にもあるように、西澤保彦や『生ける屍の死』のようなミステリSFだ。
が、先に“”で記したように、その事件そのものは日記として書かれているので、叙述トリックが仕掛けられている、即ち良くて省略、または事実改変がなされていることは確実。
大部な割りには読みやすいので、私のようにそのボリュームだけに敬遠していた人も、一度手にとって見て欲しい。
あとはいつものツッコミを2つ。
其の1。
ナチスを持ち出せばどんな荒唐無稽な設定でも強引に導入できるなあ…。
其の2。
速記ができるという言い訳は書いてあるとはいえ、数日間、日本語にしてトータル500ページもの日記を書けるやつなんていねー!(暇を持て余しているならともかく、連続殺人に巻き込まれているのだ)
『ドイツ編』のように一人称記述なら、その場その場の正確な会話や読者を煽る/焦らせような記述も不自然ではないのに。その答えは、叙述トリックを仕掛けるためしか考えられないではないか。