思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

卵の中の刺殺体

門前典之
☆☆☆☆
南雲堂

2メートル四方に満たない、コンクリート製の「卵」の中で頭を刺された死体。作中では史上最少の密室と呼ばれるが、まるで清涼院流水みたい。調べてないけど、実際に『コズミック』にあったネーミングかもしれない。
名探偵たる蜘蛛手は、海外放浪中で、ワトソン役の宮村が事件に巻き込まれて、その手記と、ルポライターの電動ドリルで死体を刺す連続殺人犯「ドリルキラー」のブログ記事が交互に配置される。
名探偵が帰ってくるとすぐに事件を解決するのは、神津恭介に代表される、天才型探偵ミステリの常道やね。

「読者への挑戦状」が6、7割進んだ時点で提示される。そこからの解決編は、作者ならではの建築知識トリック、地味なド本格的な論理的アリバイ崩しというか、ハウダニットと、叙述トリック的な構成トリックと、複数の人物誤認トリックが明かされる。それこそいわゆる「10作品分のプロットが盛り込まれた」作品であったことが分かる。
中には、新本格ファンならニヤリとさせられる作品へのオマージュも。
ただし、タイトルでもあり、冒頭のツカミでもある、「卵の中の刺殺体」という密室設定は、陳腐な密室ものであるかのような印象ともたれて、逆効果じゃないかなぁ・・・。もちろん、本筋のメイントリックに必要なものではあるんだけど。