思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

ついに全巻政治劇に。主にやまとに喉元に突きつけられた日本のあり方の選択に向けて、竹上総理、天津外務次官、海原官房長官の苦闘が描かれる。
国連の安全保障理事会で「『やまと』が国家でありえないという決定的な条件は!?」と切り返す天津なんて最高にかっこいい。米国連大使の反論に「その意思があり機能を備えれば原則として可能である」と即座に返すなど、外交の見本のような鮮やかにして即妙の“返し”である。
88ページで海江田が「核を積んだとされている」ではなく「核を装備した国だ」と言っていることにも注目だ。ある意味最後までグレーとされているやまと核武装の有無の決定的1コマともいえる。
海江田の戦術として、攻撃を封じるために通信・情報を駆使することが最後まで描かれるが、今回のライアン大佐生存や、各国との通信回線などはその端緒といえる。
東京湾侵入における核非武装宣言なども、現状の米軍基地との問題を踏まえており、なおかつ国際外交の二枚舌戦略の当たり前さを如実に描いた秀逸なエピソード。
やまとへの大使派遣も面白い一手だが、なぜ運輸大臣なのか、当時から現在までの疑問。
「正確な情報がパニックを抑えているのだ」というのも、口蹄疫尖閣諸島問題・原発事故対応と、民主党政権に聞かせてやりたい台詞。
ベネットがホットラインで竹上に言ったのは、最後通牒に過ぎない。(真の外交かなら、即座に「ではアメリカが日米同盟以外にも複数の同盟を結んでいるのは何のためだ?」と切り返すべきだが)

沈黙の艦隊(8) (講談社漫画文庫)沈黙の艦隊(8) (講談社漫画文庫)
かわぐち かいじ

講談社 1998-05-11