思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

SFらしからぬタイトル。恐竜をめぐる国際謀略小説(世に言う冒険小説)というのが妥当な分類と言えよう。
決して面白くないわけではないのだが、800ページもあり、読んでも読んでも進んでいる気がしなかった。
ここまで長くなったのは、登場人物が多いこともあるが、とにかく要素が多いから。取材していてぶち当たったことを残らず放り込んだんじゃないかと思うくらい。
日本とアメリカ、個人と家族、大人と子ども、田舎と都会、進化と創造、キリスト教イスラム教、科学と伝統などなど…。
アメリカの占領政策ミーム爆弾と捉えるところや、恐竜をアメリカのない歴史の代替物として捉えていること、などはなかなか面白い視点だと思う。
もちろん、メインは恐竜を巡る最新の学説で、首長竜が、『ジュラシック・パーク』のように立ち上がると首は骨折、脚は脱臼する、というのが面白い。実際はかみ合う脊椎で支えるようにして、ティラノサウルスのように首からしっぽまでをほぼ一直線にして、3脚支持でごくゆっくりと首を左右に振りながら草を食べていたのではないか、というのだ。
個人的に不満だったのが、原発と恐竜を対比していることと、現場がどこなのか書かれていないことだ。北陸とは書かれているし、敦浜なる地名は何度も出て来るので、まず福井県のことだと思うのだが、作中では県名が一度出て来るのみ、しかも「福一県」として出て来るのだ。それなら日本とアメリカではなく、“口本とフメリカ”の話にしたらどうだ?と言いたい。(些末なことなのだが)

竜とわれらの時代 (徳間文庫)竜とわれらの時代 (徳間文庫)
川端 裕人

徳間書店 2005-10