思考の遊戯・続

「雑読雑感」の管理人・レグルスの読書メモ、映画のネタバレ感想など

くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4)くらやみの速さはどれくらい (ハヤカワ文庫 SF ム 3-4)
小尾 芙佐

早川書房 2008-12-10
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21世紀版の『アルジャーノンに花束を』と言われているようだが、私に言わせれば凡作。
SFとすれば、肝腎の自閉症治療までが長すぎる。本題が始まるのが400ページ以降(全600ページの内2/3が過ぎてから!)であり、それまでの400ページは何を書いているのかといえば、自閉症患者の日常を描いているだけ。
純文学としてみれば、しっかり取材して書かれているこのパートは非常によくできていると思うが、SFファンからすれば冗長なだけ(退屈とは言わないが)。ソウヤーの『フレームシフト』のほうが類似作品としては比較的コンパクトにまとまっているし、SFとしての魅力も満載でお勧めできる。
ホーガンとかブリンが難なく読める人なら気にならないのかもしれないが、私には無理。
自閉症の人って、イディオ・サヴァンに近い?ちょっと一人称の文章が固いのが若干読みにくい気がした。これが自閉症の人をリアルに描いたのか、この主人公だけの特性なのか、翻訳に難あり、とするのかは分からない(いちおう『アルジャーノンに花束を』と同じ訳者だからそんなことはないんだろうけど…)